第43章 満天恋月 ー 織姫争奪戦 ー / 家康END
「俺も、同じ事を書いたよ」
舞の肩でそう呟くと、舞は『え?』と不思議そうな言葉を返してきた。
舞がこうして素直に『願い事』を話してくれたからには、自分ばかり言わない訳にはいかない。
「平和な世を作るから、それを舞が傍で見ていてくれますようにって」
「家康……」
「いつか乱世なんて終わらせて、大切な人が笑顔で居られる世界をきっと作る。だから、それを……大切な舞にも見届けて欲しい」
今は乱世。
戦でたくさんの人が傷つき、愛する者を失い……
身体も心も、敵も味方も自分自身でさえ、たくさん血が流れてきた。
だから、それを食い止めて。
新たな夜明けを、この手で成す。
───そう、心に決めた。
舞がいつまでも笑って居られる世の中を。
その笑顔は、この手で守りたい。
「……舞、聞いて」
両頬に手を当て、上を向かせる。
舞の綺麗な瞳は、光を宿してキラキラ輝いて。
それを見ながら、ありったけの想いを伝える。
「舞、大好きだよ。焦がれるほどに愛しい……それは舞のせいなんだから、責任もって傍に居て。あんたは馬鹿みたいに眩しくて、温かくて……俺の、太陽なんだから」
「家康っ……」
次第に舞の瞳が、赤く潤んでいく。
涙が零れ落ちる前に、そのまぶたに口づけを落とした。
額にまぶたに、鼻に頬に……
優しく癒すように唇を押し当てる。
そして、その柔らかな桃色の唇を塞ごうとした時、舞が口を開いた。
「ありがとう…そんな風に言ってくれて」
「うん」
「私、ずっとずっと、家康の傍に居る。家康こそ…こんなに好きにさせた責任取ってくれなきゃ、駄目なんだからねっ……」
(あ─……可愛い。なんでこんなに可愛いんだ)
泣き笑いでそう言う舞は、馬鹿みたいに可愛い。
本当に可愛すぎて、どうにかなりそうだ。
心がざわつく。
愛しさが溢れ返って、狂おしいほどに焦がれる。
そのまま衝動に駆られて舞の唇を塞げば、甘い吐息と一緒にむせ返るような甘い匂いが広がって……
歯止めが効かずに貪りたくなった。