第43章 満天恋月 ー 織姫争奪戦 ー / 家康END
サラサラ…サラサラサラ…………
清らかに流れる、小川の水。
満天の星空を映し、そして──………
二人の願いを静かに音を立てて運んでいく。
舞と一緒に、梶の葉が見えなくなるまで。
指同士を絡め合い、肩を寄せて見守った。
その姿はきっと、これからの二人の姿。
どんな困難も、二人で乗り越えていけるように。
お互い手を取り合って、肩を並べて。
───そして、どこまでも、歩いて行くんだ。
「家康、あのね」
やがて、舞が肩に頭を預けながら、ぽつりと呟いた。
「私ね、梶の葉にこう書いたの」
「うん?」
「家康が作る平和な世界を、家康の隣で一緒に見られますように…って」
「え……?」
思わず、目を丸くして舞を見る。
すると舞はどこか遠くを見るように、視線を小川の先に向けながら話し始めた。
「私の居た世界ではね、家康は二百年以上も続いた平和な世界の、基礎を作った人として……ずっと語り継がれているんだよ」
舞の居た世界。
それは、五百年も先の未来で……
その世界で、自分がどんな風に言われているかなんて、興味はなかった。
だから、聞く事もしなかったけれど……
それでも、舞がそう言うならば、自分は後世に少しは爪痕を残せたのだろうか。
「私、家康に出会って思ったの。家康は負けず嫌いで、ぶっきらぼうで…でも、優しくて強い人で。そんな家康だから、きっと乱世に負けないで、優しい平和な世界を作る事が出来たんだろうって」
「舞……」
「だから、家康がそんな世界を作るとこを、一緒に、誰よりも傍で見られたらいいなって……思ったの」
「……っっ」
(ああもう、この子は本当に───………)
言葉が出なかった。
今が夜で良かったと、心底思う。
きっと、馬鹿みたいに顔が真っ赤だからだ。
「……ばかだね」
少し体制を変え、舞の方に向くと。
その小さな身体に腕を回し、抱き締めた。
こんなに小さくて華奢な女の子が、どうしてこんな力を持っているんだろう。
愛しさが溢れ出す。
止めどなく、川の水の様にサラサラと……
それは空気を紡いで、言葉となる。