第42章 満天恋月 ー 織姫争奪戦 ー / 秀吉END
(舞、俺は──……)
「なんか、強い風だったね……あっ」
なんとも言えない気持ちになり、振り返ると後ろに居た舞を、そのまま抱きしめた。
鼻に舞特有の甘い匂いが、ふわりと纒わり付き……
それが心の柔らかい部分をくすぐり、愛しい気持ちが心を支配して、溢れ出す。
舞、素直過ぎるのもいい加減にしろ。
どうして、そんなに可愛いんだ?
─── あんまり可愛いと、我慢出来なくなるだろ?
「……俺はやっぱり、強欲かな」
「え?」
「お前が俺の織姫なら、今日が終わっても、俺は絶対お前を離したりしない。一年に一回しか会えないなんて、そんなの耐えられない」
「秀吉さん……」
「なぁ、舞……」
舞の両頬に手を当てて上を向かせる。
そのまま一回、額に唇を押し当て……
まるで懇願するように、舞に願い出た。
「御殿に連れて帰っていいか…?お前を…抱きたい」
「……っっ」
途端に舞の顔が赤く染まる。
想いが通じ合って、その日に身体を求めるなんて。
我ながら、馬鹿だと思う。
それでも、溢れ出た愛しさは止まってはくれない。
舞が、好きだ。
全て、余すところなく愛したい。
本当に、好きだ ───…………
「……うん、いいよ」
すると、舞は小さく頷き、瞳を潤ませ……
恥ずかしそうに、そう答えた。
その表情がやけに煽情的で、目が離せなくなる。
「……いいのか?」
「……いいよ、私も、秀吉さんに愛されたい」
「一回触れたら……もう離せなくなるかもな」
「…それでも、いいよ……その代わり」
舞は照れたように、ふわりと笑って。
頬に触れている手に、自分の手を重ねてきた。
小さな手から温もりが流れ込み……
それがまた愛しくて、崩壊寸前の『余裕』に追い打ちをかける。
「……優しく、愛してね?」
(ああもう、駄目だ──……)
舞、悪い。
それは、聞き入れてやれないかもな。
小さく笑いながら、額同士をくっつける。
そして瞳を覗き込み、ぽつりと答えた。