第42章 満天恋月 ー 織姫争奪戦 ー / 秀吉END
「舞、大丈夫か?」
願い事を書き終え、舞の後を追って括り付けに行くと。
舞は高い所に短冊を飾りたいのか……
小さな身体で、うんと背伸びをし、腕を伸ばして笹に向かっていた。
思わず心配になって傍により、支えるように後ろから腰に手を当てると。
舞はびくっとなって手を止め、振り返ってきた。
「あ、秀吉さん、書けた?」
「まぁな、それより何をそんなに無理して上の方に括り付けようとしてるんだ?」
「だって…上の方につけた方が、天に近いでしょ?その方が、願い事が叶う気がしない?」
「なんだ、その可愛い理由は……」
先程から舞が可愛い過ぎて、参ってしまう。
舞の頭をぽんぽんと撫でて、伸ばしている腕を掴むと。
そのまま、短冊をひょいと舞の手から取った。
「あ、秀吉さん、何するの?」
「俺が高い所に飾ってやる。お前が頑張るより、俺の方が高い位置に飾れるぞ」
「あ…ありがとう。でも、見ちゃだめだよ?」
「解ってるよ、見ない見ない」
(そんなに言われると気になるが…見る訳にはいかないよな)
思わず心の中で苦笑して、舞の短冊を裏返して、括り付ける。
その隣に、自分で書いた短冊を二枚。
三枚の短冊を、叶うようにと願いを込めて飾った。
どうか、舞の願い事が叶いますように。
短冊に書いた願いとは別に、そう強く思った。
「よし、これで…………」
三枚の短冊が並んだ事に満足し。
そのまま舞のほうに振り返ろうとした刹那。
──── ザァッッ…!!
少し強めの風が吹き、笹を揺らした。
飾った短冊も風に煽られ。
裏返していた舞の短冊も、ふわりと舞い上がって……
その瞬間、見えてしまった。
舞がたった一枚書いた、願い事。
それは──……
『秀吉さんの願いが、叶いますように』