第42章 満天恋月 ー 織姫争奪戦 ー / 秀吉END
秀吉と舞は、指を絡めるようにして手を繋ぎ、そのまま市の七夕祭りにやってきた。
祭りと言うだけあって、人々で賑わい、屋台には色々なものが売られ……
そんな中を二人で、寄り添いながら歩く。
『過保護な兄と妹』
そんな関係は、もう終止符を打って。
『恋仲同士』として……
これから訪れるであろう、些細でも幸せ過ぎる幸せを思い、秀吉は目元を緩めた。
「わぁ……大きな七夕飾りだね!」
市から程なく歩いた所にある小さな神社。
そこの境内には、見事なまでに笹飾りが飾り付けられており、舞はそれを見て、感嘆の声を上げた。
星飾り、鶴、提灯などが、大きな笹に所狭しと括り付けられ……
また短冊も数え切れないほど、下がっている。
(ここに書かれている願い、全てが叶うといいな)
戦乱の世、そんな中の儚い願い達。
そんな事を思いながら、七夕飾りを見上げた。
「秀吉さーん、こっちで短冊が書けるよ!」
舞が手招きして呼ぶので行ってみると。
七夕飾りから少し離れた所で、巫女が短冊を配っていた。
色とりどりの短冊を手に持ちながら、巫女はニコニコと笑みを向けてくる。
「何枚書きますか?」
「えぇと…私は一枚でいいかな、秀吉さんは?」
「そうだな……」
書きたい願い事。
それを頭の中で思い浮かべて、いくつか出てきたものを絞る。
自分はそこまで強欲では無いと思っていたが……
それでも絞りきれない願いはあるもので。
そのまま、舞に苦笑しながら答えた。
「俺は二枚にするかな、一つに絞れなかった」
「秀吉さん欲張りだっ、ふふっ」
「そう言うな、一枚に二つ書くのも変だろ?」
二人でやいやい言いながら短冊を受け取り、用意されている机で筆を取る。
舞は『見ちゃだめだよ?』と手で隠しながら、サラサラと筆を走らせ、早々に短冊を飾りに行った。
(なんだ、あの可愛すぎる生き物は)
そう思いながら、自分も短冊に願い事を書く。
神頼みや、他力本願。
そんなのは嫌いだけれど、それでも…
この願いが、天に届いたらいいと思う。
願いは星のように煌めき、そして。
高みへ向かう自分の、道標となれ。
――そんな風に思ってもいいだろう?