第39章 ベイビー*ロマンチカ / 豊臣秀吉
「……悪い」
秀吉は、そっと舞を引き寄せ、抱きすくめた。
小刻みに震える、その小さな身体は温かく。
何よりも愛しかった。
「戯れなんかじゃないよ」
「秀吉さん……」
「俺はずっと、お前を嫁にしたいって思ってるから」
「でも……」
身体を少し離し、舞の額にそっと口付ける。
まだ信じていなさそうなので、秀吉は舞の目を覗き込んだ。
「じゃあ、やり直させてくれ」
そう言って、舞の前に先ほどの様に片膝を立てて、跪く。
そして、手をそっと取り……
その甲に、唇を押し当てた。
「……っ」
舞が息を詰める中、秀吉はその甲に熱く口付ける。
舌を這わせ食むように、ゆっくりゆっくり愛でていく。
「ぁ……っ」
舞がぴくっと身体を震わせたとこで、ゆっくり唇を離し、囁くように口を開いた。
「俺はお前を愛してる」
ゆっくりゆっくり想いの全てを伝えるように……
その言葉、一つ一つを紡いでいく。
「お前の心も、身体も、人生も……全て愛してる。だから、一生俺の傍に居てくれ。何からも、絶対お前を守るよ……俺と結婚して下さい。俺だけの、お姫様」
パチパチ……パチパチパチ……
部屋を温める、火鉢の音が心地よく響く。
部屋が温かすぎるのか、舞は顔を火照らせ。
可愛いくらいに真っ赤にして……
小さく、こくっと頷いた。
「舞……」
「秀吉さんの、お嫁さんに、なる。なりたいです」
消え入るような小さな声を聞いて。
秀吉は思わず、その掴んだ手を引き寄せた。
舞がもたれ掛かって、それを全身で受け止める。
小さく華奢な身体。
でも温かい、温かすぎる身体。
「舞、ありがとう」
「ごめんなさい……秀吉さん。私子供っぽくて」
「そんな事ない」
「秀吉さんばかりが悪いんじゃないのに」
「いや……ハッキリしない俺が悪いんだ」
肩越しで話すのがもどかしく、舞を少し抱え上げて、ゆっくり畳に組み敷く。
見上げる瞳は、怖いほど澄んでキラキラ光っていて。
腹の底まで見透かされているような気分になる。