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【イケメン戦国】燃ゆる華恋の乱

第37章 無防備な蜜、無自覚な蝶 / 石田三成




「湯浴み……湯殿まで運びましょうか?」


ある夜。
二人で談笑し、三成が御殿へ帰る間際の事だった。

女中を呼んで欲しいと頼んできた舞に理由を伺い、三成は運ぶ事を買って出た。

しかし、舞は真っ赤な顔をして首を横に振る。


「そ、それはちょっと駄目だよ」
「何故、問題でも?」
「は、恥ずかしいから……」
「別に中は覗きませんよ。帰りだって運ぶ必要があるのですから、男手のほうが楽だと思うのですが」


三成の申し出に舞は困り果てたが、無下にも出来ず。


「絶対外で待っていてね」


消え入るような声で、念を押した。









舞を湯殿まで運んでやると、三成は戸の入り口で舞が湯浴みを終えるのを待っていた。

勿論、覗く気なんて、更々無かった。
しかし。



(……舞様は、とても温かいんですよね)



最近、妙な感情がまとわりついているのも確かだった。

三成は自分の両手をまじまじと見る。
最近、この手が覚えた舞の温もりや柔らかい肌の感触。

それは、とても胸を詰まらせ……

何か心が渇いていくような感覚を覚えた。

自分の中の欠片が足りないような、喪失感。
それを求めて、飢えているようで……



(なんだろう、この物足りなさ……)



ふっと戸の向こう側に居るであろう舞を思う。

今は湯浴み中。
その着物を暴いたなら、その素肌はどのようなものなんだろう。

きっと白く滑らかで、心地よい感触に違いない。




「…………っ」




そこまで考えた時、身体が酷く疼いた。
芯が、燃えるように熱い。

こんなに激しい感情は、生まれて初めてだった。





「……駄目ですよ、戸を開けちゃ……っ」





自分自身に言い聞かせるように呟く。
信用されている、だから舞は安心して男一人残して湯浴みをする事が出来るのだ。

だんだん息が荒くなるのを堪える。

こぶしを握って、気持ちを抑えていると……
足元を何か動くものが掠った気がした。

そちらに視線を移すと。

小さなネズミが足元を通り過ぎ、湯殿の戸の細い細い隙間から、中に入って行ったのが見えた。



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