第36章 琥珀が結んだ熱と君 / 徳川家康
(なにこの顔、すごい可愛いんだけど)
舞の蕩ける顔を見ながら、だんだんと腕を身体に回していく。
その小さく華奢な身体を、すっぽり覆ってしまうと、舞は少し身じろぎをして。
すると、突然目を見開いて、唇を離した。
「なんか家康、熱くない?」
そう言って、鼻先がくっつきそうな距離で見つめてくる。
ちょっと待て、この距離は口付けるより恥ずかしいんだが……
「なんか、顔色もあんまり良くないし……」
「そうかな、あんたに触ったから、火照ってるだけじゃない?」
「そうなの……かな」
信用して無さそうに、舞が額同士をくっつけてくる。
熱を計ってるんだろう、しかし。
早鐘のように打つ心臓が、持ちそうにない。
「やっぱりちょっと熱いような……」
「……っ」
「家康……? ぁっ」
突然首筋に吸い付いてきた家康に、舞は息を詰まらせた。
抱きしめる腕にだんだん力がこもっていき、首筋にはねっとりと舌を這わされる。
しばらく堪能した後、ちゅ…っと音がして唇が離れた。
「い、いえ、やす……?」
真っ赤になる舞の首筋には、くっきりと花びらのような痕が残っている。
それを指で撫でながら、家康は少し残念そうに呟いた。
「……朝じゃなきゃ、部屋に連れていくのに」
「……っ」
「俺達も朝餉、食べに行こうか」
家康は薄く笑い、舞の頭を撫でた。
(寂しがってるなら、安心させたいな)
心の奥底からそう思って、御殿の中へと舞の手を引いた。
「舞が寂しがってるから、安心させたい?」
「お前……相談なんて珍しいな」
秀吉と政宗が、代わる代わる家康の顔を覗き込む。
心底不思議がる秀吉と、『いい事聞いた』風の政宗。
(くそ……なんで俺はこの二人より小さいんだ)
そんな事を思い、口を噤む。
安土城の武将の中では、町娘に人気のある二大巨頭であるこの二人ならいい案をくれるのでは。
そう思ったのは間違いだろうか。
人気なら三成もだが、あれには頼りたくない感がある。
すると、政宗が秀吉より先に口を開いた。
「ちゃんと伽、してるか?」
「政宗……それは答えにくいだろ」
秀吉が呆れ顔で政宗に物申す。