第35章 純恋花〜君が知らない罪と罰〜 / 豊臣秀吉
「それを早く言え、馬鹿!」
秀吉は政宗をぶん殴り、政宗が伸びたところで、駿馬の如く急いで城へと走って行った。
家康はそれを唖然と見送り……
「織田家の家臣って、アレでいいわけ?」
ジト目で光秀と秀吉の行った先を見つめた。
「何処に行ったんだ、あの野郎……」
光秀が連れて行ったと言うので、舞の部屋に行ってみれば……
案の定と言うか、やっぱりと言うか、二人の姿は無かった。
安土城内からは出ていないと思うが、一体どこへ行ったのか。
(ああもう、不安しかない……っ)
嫌な予感ばかりが駆け巡る。
闇雲に走り、安土城内を探していると……
真っ暗な廊下に、部屋から微かに明かりが漏れているのが見えた。
(あれは、書庫か?)
扉まで近づく。
すると。
「秀吉さ…っやぁ……っ」
舞の声がする。
しかも……
「だめぇ…っ秀吉、さ……っあっんぁ…っ」
砂糖をかけたように、甘ったるい声。
まるで、抱かれて喘いでいるような……
(俺の名前、呼んでなかったか……?)
秀吉は音を立てないように、そっと扉を開いた。
微かに灯る、明かりの先を目で追う。
その明かりの先に見えたのは。
「はぁ…っんんっあぁ……っ」
花の散る打掛が脱ぎ捨てられ、下に着ていた薄水色の着物は、胸元がはだけ裾は割られ……
手拭いで目隠しをされた舞には、光秀が覆いかぶさり。
胸元に手を忍ばせ動かしながら、足を撫で上げ……
首筋に、音を立てて吸い付いていた。
(…………っ!)
考えるより、身体が先に動いていた。
秀吉は二人に駆け寄り……
全力で光秀の顔をぶん殴った。
―――ドォンッ!
光秀がぶっ飛ばされ、書庫の壁に激突する。
怒りで声がも出なかったが、なんとか絞り出す。
「てっ…めぇ…………っ!」
光秀はむくっと起き上がり、ぺっと血を吐いて口を拭った。
「部屋に運ぶだけだったんだがな、舞があまりにもお前を呼ぶから。まぁ介抱だ」
「介抱って……!」
「俺をお前と勘違いしたままでな。 あんまりいい声で啼くから、止まらなくなった」
光秀は立ち上がり、不敵に笑うと、秀吉に近づき肩をぽんと叩いた。