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【イケメン戦国】燃ゆる華恋の乱

第34章 桜の追憶『狂想恋歌』 / 石田三成





「嫉妬するとは、お前も成長したな、三成」


政宗が野性的な目で三成を見る。
まるで、獲物を狙っているかのような口調に、三成はいつもの様子で答えた。


「自分と恋仲の姫が、他の男に触られそうになっているのを見れば……至極当然の行動だと思いますが」
「へぇ…言うようになったじゃねぇか」
「だから、政宗様も軽率な行動は控えたほうが、宜しいかと」


相も変わらずの様子の三成に、政宗は鼻で笑った。


「軽率でもないんだけどな」
「は?」
「俺は、好きなものには触れる、触れたら奪う主義でね」


(それは、つまり……)


三成は柔らかく笑い、掴んでいる政宗の手を、見掛けには寄らない力強さで振り払った。


「では、これからは舞様をもっと注意深く見ている事にしますね。 待たせているので失礼致します」


そのまま政宗に背を向け、書庫へと戻ろうとした。
しかし、政宗の一言が三成を般若に変えた。



「未だに惚れた女の身体も奪えてない腰抜けが、旦那ヅラすんな」



三成の足がピタリと止まる。
政宗に顔を向けぬまま黙っていると、背の裏の政宗から呆れたような笑いが盛れたのが聞こえた。


「図星かよ、情けねぇな」


三成は静かに瞬きをし、懐刀の柄に手を掛けた。
瞬間。



―――ジャキィィィィッッッ!!!



「っ!!!」

剣先は僅かに政宗の喉を掠り、政宗は壁を背に、ずるずると座り込んだ。
座り込んだと同時に、顔の横に小刀が音を立てて突き刺さる。

三成が振り向いた、一瞬の出来事だった。

三成は小刀の柄を掴んだまま、政宗の顔を覗き込む。




「黙れ」




政宗が唖然と見ていると……
三成は壁から静かに刀を抜き、カチンッと鞘に収めた。

そして、いつもの天使の笑みを浮かべる。


「口は災いの元ですよ、政宗様」
「三成……」
「さて、舞様が痺れを切らしているかもしれませんね」


書庫へ戻っていく三成を、政宗は座り込んだまま見送っていた。

姿が見えなくなると、微かに切れた喉元を押さえ……
怪訝な表情で呟いた。


「あれは何か、自分の中にわだかまりがあるな」


刀を突きつけた三成の瞳は……
深い紫の焔が燃えていた。

あれは、底知れぬ業火の焔。


「三成……何を考えていやがる」


政宗は顔を歪め、喉の血を拭った。



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