第31章 可憐気パンデミック / 明智光秀
「お前の面白いほくろの場所なら、知っているぞ、例えばそう……」
無遠慮に着物の裾をめくり、脚を撫で上げる。
舞が息を呑んで、脚をぴくっと跳ねさせたので、それを持ち上げて甘く噛んだ。
「この柔らかい内太ももの付け根とか……今宵はそれ以外の面白い場所のほくろを探すとするか、隅々まで…な」
「光秀さん……っあっ」
「いい子なら、大人しく抱かれていろ」
その夜、光秀は狂うように舞を抱いた。
生まれて初めて『嫉妬』と言う名の、甘い甘い病魔に蝕まれていたと言う事にも気づかずに……
(……なんだろうな、この感情は)
次の日、光秀は公務も手に付かず、ため息ばかりをついていた。
昨日舞に対して、抱いた感情。
愛しいと想う気持ちは変わらないのに、何故か舞をめちゃくちゃに傷つけたいと思った。
支配心とは違う、もっとえげつない……
「光秀」
未知の感情に苛立っていると、そこへ秀吉がやって来た。
こいつは舞の兄貴分と言うだけで、何か舞の特別なんだろうか。
「……意外とまつ毛の長い秀吉、か」
「ん? お前、何を言ってるんだ?」
「戯言だ、何か用か」
「さっきの報告書なんだが……」
そう言って、ぺらりと巻物を開く。
一生懸命説明をしている秀吉とは裏腹、光秀は上の空で聞いていた。
(ふむ……確かにまつ毛は長いが、かなり近づかないと、これは気づかないぞ)
秀吉の顔を近くで、まじっと凝視していると……
その垂れ目が若干釣り上がり、キッと光秀を睨んだ。
「……聞いてるのか、光秀」
「いや、まつ毛が長いなと思って」
「聞いてろよ。 ったく、舞みたいな事言って……お前今日なんか変だぞ?」
『舞』
そう秀吉の口から出ただけで、何故か腹立たしさに駆られた。
光秀はさも面白くなさそうに、秀吉に問う。
「舞もお前がまつ毛が長いと?」
「そもそも、そんな事を言うのは舞くらいだ」
「いつ言われた?」
「いつだったか…城の縁側で舞が居眠りしてた時だな。 風邪ひくぞと起こした時に、そんな事言ってた」
如何にも舞らしい理由だ。
しかし居眠りしていて男に起こされるなど……