• テキストサイズ

【イケメン戦国】燃ゆる華恋の乱

第30章 純恋花〜君に狂った花になる〜 / 豊臣秀吉






(でも……さすがにこれは無いよな……)



その日の夕刻。
政宗の御殿の門の前で、ウロウロとしている秀吉の姿があった。

気になって来てみたは良いものの、どうしても中には入れない。
舞を迎えに来た、と言えばいいのかもしれないけれど……



(こんな物まで買っちまうし……)



手に持っている簪に目をやる。
さっき市へ行って、舞の為に買った玉簪。

今朝、嫉妬した詫びのつもりだった。
舞は気づいてないかもしれないけれど。



(……明日、渡すか)



やっと心を決めて、数歩御殿の門から離れた時だった。



「ありがとうね、政宗。 ご馳走さま」
「礼を言うのはこっちだろ、悪かったな」



聞き慣れた二人の声に振り返ると、門の中から政宗と舞が寄り添って歩いてくるのが見えた。

姿を確認した瞬間、秀吉は急いで近くの木に身を隠す。



(……別に隠れる必要ないだろ)



咄嗟に取った行動に、秀吉は自分で自分が馬鹿らしくなった。
でも、なんか……



「今日は寒いから気をつけて帰れよ」
「だ、大丈夫……ありがとう」



舞の衿元を優しく直す、政宗。
それに、少し頬を染める舞。

ただならぬ、いい雰囲気に、足が竦んで動けない。
別に、舞と恋仲なのは自分なんだし。
やましい理由なんて……

と、その時だった。



「舞、まつ毛付いてるぞ。 ちょっと目をつぶれ」
「え、うん」



舞がゆっくり目をつぶる。
その瞬間、政宗が舞の唇をかすめ取るように、サッと口付けたのが見えた。



(…………っ!)



考えるより、身体が先に動いていた。

秀吉はただならぬ速さで二人に駆け寄り……
後ろから舞の両肩を掴むと、政宗からぐいっと引き離した。



「え、秀吉さんっ?!」



突然肩を引かれ、舞が驚きの声を上げる。

しかし、それに秀吉は答えず……
見た事もない険しい顔で、政宗を睨みつけたままだ。


「……」


政宗も無言で、ちょっと驚いたような表情になったが、やがてくすっと不敵な笑みを浮かべた。




/ 523ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp