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【イケメン戦国】燃ゆる華恋の乱

第26章 戯れと高まりの先の君 / 明智光秀





「顔も薄汚れているぞ、こっち向け」
「あ……」



光秀が羽織の裾で舞の顔を拭いてやると、舞は慌てたように、じたばたした。



「だ、大丈夫です…っ、羽織が汚れちゃいますよ」
「気にするな、どうせしばらく洗濯していない」
「え…、洗いましょうよ……っ」
「面倒くさい」
「……光秀さんって、意外にズボラですよね」


舞がジト目で見ているので、またさらにからかってやろうと、光秀はニコニコと笑って続けた。



「そう言えば、しばらく湯浴みもしていないな」
「え、それってどうなんですか」
「舞が一緒に浴びてくれるなら考えよう」
「なんでっ!」
「そう喜ぶな」
「……っ、喜んでませんっ」



(頭から湯気が立っていそうで、面白い)



光秀は、この素直な娘を、いつしか可愛いと思うようになっていた。

その気持ちに、名前などは無いけれど。





その時、風が強く吹いて、倉庫が音を立てた。
舞が、びくっとなって見上げる。



「……風が強いですね」
「そうだな…もう薄暗くなってきたし、キリのいいとこまででいいぞ」
「はーい」


舞が生返事をして、立ち上がった時だった。




――― ガターンッ!!!




開きっぱなしだった倉庫の戸から、突風が吹き抜けた。
舞を庇おうと、光秀はとっさに戸を背に立ち上がり、舞に腕を回す。

戸は、大きな音を立てて閉まり、砂ぼこりが舞った。



「……大丈夫か」
「は、はい……っ」



舞はびっくりしたのか、目を白黒させて光秀の胸にしがみついている。

しばし舞の温かな体温と感触を堪能していると……

やがて、舞がぐっと光秀の胸を押した。



「庇ってくれて、ありがとうございました……っ」



見ると、耳まで赤くしている。
光秀はくすっと笑い、身体を離した。

このまま舞をからかって楽しみたいが……
光秀は、少し気にかかる事があった。

先程戸が閉まった時、戸とは別の、何か鈍い音がしたような。



光秀はおもむろに、閉まった戸に近づき、開けようと力を入れると……


予想通り、戸がびくともしない。


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