第3章 愛しい爪先に口付けを / 伊達政宗
政宗は言葉も出せず、無意識に舞の頬に手を伸ばした。
瞬間。
指先が少し触れただけで、舞の身体がびくっと大きく跳ね上がった。
「舞…」
「政、宗、私……なんか、おか、しいの」
舞はたどたどしく言葉を紡ぐ。
呂律も回っていない。
何度も唇を舐め、熱い息を吐き、でも一生懸命に政宗に伝える。
「身体が、あ、熱くて、どう、してなのか、解らないんだけど、でも」
「政宗が、欲しくて、堪らない……っ」
(………………っ!!!)
その時脳裏に浮かんだのは、先程の光秀の言葉。
『そうだな……四半刻経ったら宴会から連れ出してやれ』
『じきに解る。舞が他の男に喰われたくなきゃ、大人しく助言を聞いておけ』
四半刻なんて、とっくに過ぎている。
舞、お前、
光秀に、何をされた…………?
「……くそっ」
政宗は小さく吠えると、舞を横抱きにして立ち上がった。
こんな舞は誰にも見せられない。
早く、部屋に運んでやらないと……!
「政宗様、舞様はどうかなさったのですか?」
その時、声をかけてきたのは三成だった。
が、政宗のあまりの気迫に一歩後ずさる。
「酔っ払ったみたいだから、部屋に連れていく。 くれぐれも舞の部屋に近づかないようにと伝えといてくれ。 いいか、女中もだ。 解ったな?」
「は、はい」
三成は、呆気に取られたように二人を見送った。
目をぱちくりとさせ、やがてぼそっと呟いた。
「傍に寄ったら、噛みつかれそうな勢いでしたね……」