第3章 愛しい爪先に口付けを / 伊達政宗
「政宗」
その足で、家臣と酒を酌み交わしている政宗の元に向かう。
にやりと不敵な笑みを浮かべて、光秀は政宗に言った。
「そんなに俺と舞のやり取りが気になるか。 ずっと見ていたな」
「別にそんなんじゃない」
「そんなに気になるなら、そうだな……四半刻経ったら宴会から連れ出してやれ」
「なんでだ」
「じきに解る。 舞が他の男に喰われたくなきゃ、大人しく助言は聞いておけ」
どこが助言なんだ、と言う政宗の言葉を聞かず、光秀は宴会を後にした。
「舞?」
しばらくして。
政宗は壁にもたれ掛かって、うつ向く舞の姿を見つけ、声をかけた。
うつ向いている為、顔は見えない。
が、苦しそうに肩で息をしていた。
「おい、大丈夫か」
肩を掴んで揺さぶる。
すると、舞はようやくゆっくり顔を上げた。
「………………っ!」
その舞の顔を見て、政宗は絶句した。
熱をはらんで潤んだ瞳。
上気して真っ赤になった頬。
口は半開きで、唇が濡れ……
てらてらと妖しく光っていた。
この顔に、政宗は覚えがあった。
それは閨で。
自分に抱かれている時、
自分を欲しがって欲情している時の、顔。