第23章 素直になれない君が好き / 織田信長
「信長様、この人はもしかして、死……っ」
「死んではいない、気を失っているだけだ。 今、秀吉達も駆けつけるだろう」
信長は、そっと舞の額に口付ける。
舞はビクッと身体を跳ねさせて、信長を見上げた。
「信長、様…………っ」
「この俺に心配掛けた罪は大きいぞ。 貴様には仕置きが必要だな」
「えええっ?!」
「覚悟しておけ」
勝ち誇ったような笑みで、妖艶に囁かれ……
舞は、ばくばく鳴る心臓を必死に抑えた。
信長は、城には帰らず、一件の宿屋に舞を連れてきた。
向かう途中、舞にこれまであった経緯を伝える。
今回、舞を助けられたのは、本当に偶然であったという事。
探しに出て、城下外れまで来た時、災害時にしか使わない倉庫に、人が出入りしているのを見て……
怪しいといぶかしんだところ、たまたま舞が襲われていた現場だったとか。
「じゃあ、信長様が気づいてくれなかったら、私今頃……」
「今日ほど自分の強運にあっぱれと思った事はないな」
「でも信長様が自ら探しに来てくれるなんて」
「貴様が心配だった、それだけだ」
なんの飾り気もない信長の言葉に、胸が熱くなる。
単純に嬉しかった。
「ありがとうございます、助けていただいて」
舞は深々と頭を下げた。
そしてかしこまって正座をしながら、上目遣いで信長を見る。
「危険な目に合わせたな、すまなかった」
「なんで信長様が謝るんですか?」
「お前の動きに、もっと目を配っておくべきだった」
「私も、もっと気をつければ良かったんです。 心配かけて、ごめんなさい」
舞がやたらと素直だ。
あんまり素直なので、調子が狂う。
信長はあぐらをかきながら、目の前に座る舞の顔を覗き込んだ。
「やけに素直だな、もっと言い返してくるかと思ったが」
「私だって、悪いと思っていれば謝ります」
「成程……では、もう一つ、素直になってもらうか」
「え……、あっ」
ゆるやかな動きで、信長は舞を畳に押し倒した。
ゆっくり組み敷き、舞の身体を押さえつける。
舞はびっくりしたような顔をして、信長を見上げた。