第23章 素直になれない君が好き / 織田信長
「何するの……っ、嫌!」
(何これ、どうなってるの?!)
舞は意味が解らず、頭が真っ白になった。
何故こんな事になったのか、さっぱり解らない。
しかし、考えるそばから、気持ち悪い手が、身体を侵食していく。
「やめて…っ、やだ……っ!」
着物が暴かれていく中、舞は必死に抵抗して叫んだ。
しかし、しっかりと身体を抑えつけられてしまい、身動きが出来ない。
首筋から胸元をついばまれ、手は着物の裾を割って、脚を撫で上げる。
あまりの気持ち悪さに、息が上がり始めた。
(私、このまま男に…………っ!)
恐怖で、涙が次から次へと溢れ落ちる。
このまま抵抗も出来ぬまま、この男の手に落ちてしまうのか。
(信長様、助けて………………っ!)
舞は思わずぎゅっと目を閉じた。
次の瞬間。
「ぎゃあっ!」
――― ドサッ!!!
(え…………?)
男の悲鳴と共に、何かが自分のほうに崩れてきた感触がした。
恐る恐る、目を開ける。
すると、襲いかかってきた男が、自分に半身を預けて倒れていた。
何がなんだか解らないまま、目を泳がせる。
すると。
「舞……っ」
凛とした、力強い声で名前を呼ばれた。
男の肩越しに、そちらに視線を向けると。
艶やかな黒い髪、意思の強そうな鳶色の瞳。
象徴である白い羽織をはためかせ……
会いたかったその人が、刀の柄に手を掛け、こちらを見ていた。
「信長様……っ」
「舞っ」
信長は男を足で転がすと、力強く舞の腕を引いた。
胸に抱きしめ、舞の体温を確認する、
「この阿呆が……心ノ臓が飛び出すかと思ったぞ」
今まで聞いた事がないような悲痛な声色に、思わず目を見開く。
「信長様、なんで、ここに……」
「話は後だ、無事で良かった」
ドクン、ドクンと信長の心臓が高鳴っているのが聞こえ……
なんだかそれがひどく安心して、舞は信長の胸にしがみついた。
「長居は無用だ、行くぞ」
信長は自分の羽織を舞に着せ、軽々と抱き上げた。