• テキストサイズ

【イケメン戦国】燃ゆる華恋の乱

第23章 素直になれない君が好き / 織田信長




「あ……っ!」


信長は有無も言わさず、紙包みを開く。
そこから出てきたのは、不格好な豆大福だった。

さっきの砂糖菓子と比べると、とてもじゃないが良い出来とは言えない。


「…………」


信長は何も言わずにそれを見つめ……
その大福を口に運んだ。


「信長様……」
「俺は、こちらだけでよい」
「え?」
「これは、俺の為に、貴様が作ったのだろう?」


(…………っ)

その言葉に、胸が詰まった。
嬉しくて、嬉しくて、でも。


「ち、違います……っ」
「は?」
「私が、作ったんじゃないです。 そもそもっ」


舞は立ち上がり、まるで子どものような顔で言った。




「別に、信長様になんて、作らないしっ! うぬぼれないでください……っ」




信長は、ぽかんとした顔で舞を見ている。

なんだかもう恥ずかしくて、恥ずかしさが頂点に達して。



(何言ってるんだろう、私……っ!)



顔を見ていられず、その場から逃げ出した。
『舞、待て』と呼び止められたけれど、振り返る余裕なんてない。

一目散に走り去るその背中を、信長は無言で見つめていた。



















「もぉぉ、私の馬鹿……っ!」

舞は部屋に舞い戻り、自分の頭をこぶしでぽかぽか叩いた。

やるせなさで一杯だった。
せっかく信長の言葉が嬉しかったのに、素直に喜べない自分に、ものすごく腹が立つ。



「なんで……なんで素直になれないの? これじゃ……」



(信長様に嫌われちゃう……っ)



もっともっと素直な自分であったなら。
針子仲間の女の子達みたいに、渡せないと解っていても、お菓子を作るような、そんな健気な自分であったなら。



(私は、こんな私が嫌いだ……っ)



瞳から涙がこぼれ落ちる。
それを拭ってくれるのが、あの方だったらいいのに。



「信長様、ごめんなさい、好きです……」



届く筈のない言葉が、空を切って、落ちていった。



/ 523ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp