• テキストサイズ

【イケメン戦国】燃ゆる華恋の乱

第21章 甘味よりも甘い物 / 明智光秀




「なんだ、料理の修行中か?」
「まぁ、そんなとこです…」


『料理の修行中』
その理由に、一瞬で辿り着く。

光秀は覗き込んだ顔でにやりと笑った。



「男か」
「な……っ!」



舞の顔が、瞬時に赤く染まる。
どうしてこんなに解りやすいのだろう。


「つまり、俺は体(てい)のいい毒味役と言う訳だ」
「別に、そーゆー訳じゃ……!」
「まぁ、何でもいいがな」


光秀は舞の口の端から、指で胡麻をすくい取った。


「好いてる男に振り向いてもらえるように頑張れ」
「ち、違いますからっ」
「俺でよければ、幾らでも毒味してやる」
「人の話、聞いてます?!」


(言い訳すれば、する程……なんだがな)


内心そう思いながら、光秀は残りの団子を綺麗に平らげた。
























織田軍に謀反を仇なす裏切り者。

そう自分を評する声は、後を絶たない。
まぁ、周りの評価なんて、どうでもいいのだけど。


(その方が、仕事も円滑に進む)


腹を見せないだけで、勘違いする輩も多い。
自分にとって、それは好都合で。

だから、その姿勢は、崩れずにきたのに……


(何故だろう、舞にだけは本心を知って欲しい)


いつしか、そんな淡く情けない気持ちが芽生えていた。

無垢で純粋すぎる、舞の笑顔に。
眩しすぎて、疎ましくさえ思った。



それなのに、もっとその笑顔が見たいと。



強く、強く思った。
自分でも信じられない程の激しさで。


そして、その笑顔は、自分だけに向けられて欲しいなんて。



(俺も、大概に馬鹿だな)



そう思った所で、なんになる?
そんな感情は自分に邪魔なだけだ。


それに、素直になってしまったら。

きっと、全て壊れてしまう。
今まで築いてきたものも、己自身も。


だったら、引き返せなくなる前に。
そんな感情は殺してしまうだけだ。


まだ間に合う。
今以上、想いが強くなる前に。


早く、芽を摘み取ってしまわねば…………






/ 523ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp