第20章 大胆な君にはご用心 / 豊臣秀吉
(笑い上戸だな、舞は)
きゃっきゃと楽しそうにしている舞を、愛しい目で見ていると。
「でも、それに引き換え……」
急に声色が変わり……
表情が曇り始めたと思ったら、今度は涙をポロポロ零し始めた。
「おい、舞?」
「私ってダメだなぁ……子どもっぽいし、すぐに拗ねるし。 ちっとも秀吉さんに釣り合わない……もっと大人の女性になって、もっと頼られるようになりたいのに……ぐすっ」
鼻をすすって、子どもみたいに泣く舞。
さっき笑ってたのが嘘のようだ。
(今度は泣き上戸ときたか)
秀吉はぷっと吹き出して、舞の涙を唇で受け止める。
目尻を舐めてやり、赤くなった目を覗き込んだ。
「お前はいい女だよ、俺が保証する」
「本当に?」
「ああ、舞は世界一の嫁だよ」
すると、舞の顔が、花が咲いたように輝いた。
また名前を呼びながら、笑顔で胸に顔をすり寄せてくる。
(泣いたり笑ったり、忙しいヤツ。 可愛いなぁ…)
なんで、こんなに可愛いのだろう。
今の言葉に、偽りはない。
舞は、自分には勿体ないくらいのいい嫁だ。
髪を優しく梳いてやる。
すると舞は『ん……っ』と息を詰まらせた。
(ん……?)
気がつくと、舞は顔を上げて、こちらを見ていた。
熱に浮かされたような熱っぽい視線。
色気のある表情に、思わず心臓が高鳴る。
「秀、吉、さん……」
「うん、どうした?」
「私……」
酒の力か、本心なのか。
舞はとんでもない言葉を口にした。
「私、今すぐ秀吉さんの子どもが欲しい……っ」
(え……っ?)
その真剣な眼差しと口調に、思わず口ごもって赤面する。
子どもが欲しいってそれは、つまり……
「と、突然どうした?」
「嫌?」
「嫌、じゃない、けど……っ」
とてもじゃないけど舞の顔を見ていられない。
思わず視線を逸らすと、舞は力をかけて押し倒してきた。
ゆっくり背中が畳に付く。
いつもとは逆で、舞に組み敷かれる形になった。
「舞……んっ」
急に唇を塞がれ、みっともない声が漏れた。