第16章 ゆりかご揺れる夜には / 豊臣秀吉
(良かった……)
秀吉は安堵のため息をつく。
身体を抱きしめたまま起き上がり、水差しから口に水を含んだ。
そして、舞に口移しで飲ませる。
こくり……と音がして、舞が飲み込んだ。
すると。
「…………ん…………?」
舞が、うっすらと目を開けた。
「舞……?」
「秀吉、さん……?」
うなされた口調ではなく、しっかりとした口調で舞は名前を呼んだ。
舞は秀吉に抱き締められたまま、首だけ左右に動かし。
やがて、秀吉の目を見つめた。
「秀吉さん、そこに居たの……?」
「俺はずっとここに居るよ……身体、大丈夫か?」
「え……?」
「お前、高熱でうなされてたんだぞ」
秀吉の言葉に、舞は首を傾げた。
何か考え込むように黙って……
ぽつり、ぽつりと話し始めた。
「変な夢を見ていたの……」
「変な夢?」
「秀吉さんが、どっかに行っちゃう夢。 私が必死で引き止めても、どんどん先へ走って行っちゃうの」
「…………そうか」
(名前を呼んでいたのは、そのせいだったのか)
優しく頭を撫でてやると、舞は気持ち良さそうに目を細めた。
「でもね、その夢、続きがあるの」
「どんな?」
「先に行っちゃって見えなくなって……私、わんわん泣くんだけれど、後ろから肩を叩かれて、振り返ったら……行った筈の秀吉さんが居て。 抱きしめてくれて、私、安心して笑うの」
舞は少し微笑んで、背中に手を回してきた。
「本当に抱きしめていてくれたんだね」
「ああ……、俺はずっとお前の傍にいたよ」
額と額をコツンと合わせ、笑いあって……
そのまま、唇を重ねた。
「ん……っ」
ついばむように口付けを落とし、そのままゆっくり押し倒した。
少しだけ高めの体温が心地よく、身体に頬を寄せると、舞はくすぐったそうに、身をよじった。
「秀吉さん、一個聞いていい?」
「なんだ?」
「なんで私達、こんな格好なの……?」