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【イケメン戦国】燃ゆる華恋の乱

第11章 純情アンチテーゼ / 伊達政宗





瞬間、舞が後ずさったほうに、思いっきり舟が傾いた。



「危なっ……!」



傾いたほうに舞が身体を持っていかれそうになったので、櫂を離し、慌てて腕を掴んで引き寄せる。

舞が政宗の胸にしがみつく形で倒れ込み、舟が左右に大きく揺れた。

なんとかそのままでやり過ごすと、舟の揺れは収まり……

二人は大きく息を吐いた。




「あっぶね……急に立つな、危ないだろ」
「ご、ごめん……び、びっくりした……」
「びっくりしたのは、こっちだ」
「で、でも魚がっ」


(あー、しまった)


舞がまだ信じているようなので、政宗はバツの悪そうに答えた。


「嘘だ、嘘」
「嘘?!」
「ちょっとからかってやろうと思って」
「うわぁ、見事にひっかかった……」


二人して、くすくす笑う。
穏やかな風が、二人の髪を揺らしていった。






(あ……)




舞の髪が風になびき、それが鼻をくすぐる。
政宗は今の体制に気がつき、途端に身を固くした。

事故とは言え、舞を抱き締めてしまっていることに思わず赤面する。

柔らかな感触と体温が直に伝わり、うまく息が出来ない。



舞も同じ事を思ったのか、急に押し黙り、政宗の胸にしがみついたまま硬直している。





「舞……?」

政宗が名前を呼ぶと、肩をびくっと震わせた。


「あ、政宗、ご、ごめん……」

そう言って身を起こそうとするので、政宗は本能的に両腕を背中に回し、舞を腕の中に閉じ込めた。



「ま、政宗?」
「悪い、もうちょっと、このまま……」



すると、舞も遠慮がちに、政宗の背中に手を回した。




















蝉の声が、遠くに聞こえる。
むせかえる夏の暑さも、今日は全然感じられない。


無言の時が流れて…………


二人の体温がこのまま溶ければいいのに。


政宗は舞の温もりを手に感じながら、想いを伝える覚悟を決めた。



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