第1章 髪を愛でて貰った後には…小狐丸
寝静まった夜の本丸で、審神者の寝室からは小狐丸の喘ぎに似た声とくすくすと小さく笑う主の声だけが聞こえていた。正面で座り込む小狐丸の髪を優しい手つきで触れている主にピクンと小さく身体を震わせた。
「はっ…ん、ぁっ…ぬしっ、さまぁ…」
「ふふっ…小狐丸?そんなに毛並みを撫でて貰えるのが嬉しいの?」
「はぅ…んっ…きもち、いぃ…ですっ…ぬし、さま…ぬしさまっ…」
はてさてハートが付く勢いで愛を求められる私は可笑しいなと考えた。いやいや…なにがどうしてこうなった?だって小狐丸が私の寝台で誘い込むような真似をして、ただ髪の毛をといでいるだけだというのに甘い声は出るわ。袴からは勃起した大きな陰茎は見られるわで…どうしろと。このまま襲えと?なぜこうなった。誰か説明お願いします。と頭痛のする頭を抑えて考えた。
「ぬし…さま?」
「あぁ、うん…ごめんなさい」
手が止まっているのを不思議がる小狐丸は欲の孕んだ瞳で私を見下ろして来た。その綺麗な一振りが紅く染まった瞳に目が離せず見つめ続けてしまう。けれど小狐丸が遠慮してしまうように瞳が潤み恥ずかしそうに視線をそらしてしまった、そんな小狐丸を誘導するかのように頬へそっと手を当てて見る。
「ぬしさまっ…」
「本当に小狐丸は可愛い…このまま食べてしまいたくなるね?」
「!…ぬっ、ぬしさま…あの…そのような事を、仰られますと…か、勘違い…してしまいまするっ…」
ドスッと私の心臓に弓矢が撃ち抜かれた気がした。嫌がられてはいないようだ、寧ろ困りながらも嬉しそうなのだが気の所為ではないだろう。私は小狐丸の手入れのいきとどいた長い白髪に唇を寄せてキスを落とす、じっと真っ直ぐ小狐丸を見上げればボッ!と顔中が真っ赤に染まりアワアワと唇を震わせる。本当に…可笑しくて笑ってしまう程に私に仕えてくれる刀剣男士は『乙女』が多いなと苦笑いしてドサリと押し倒した。
「ぬ、し…さま…」
「案外、期待してたり…?」
「!…ぅあっっ…も、申し訳…御座いませぬ…っ!」
「………」
図星かい。そして恥ずかしそうに謝って紅くなる顔を見せないように両方の手のひらで隠してしまう小狐丸が可愛らしくてとても萌えた。しかし私はとことんイジメてやろうとニヤけそうになる表情を引き締めてつー…と厚い胸板を人差し指に触れて撫でた。