第19章 おそ松さん《松野おそ松》
『松野先生どうぞ!』
「ん?」
『ハッピーバレンタインだよ♡』
「毎年毎年ありがとうございます」
スカートを揺らし、急いで来たのか
鼻を少し赤らめ
ピンク色のラッピングに包まれたソレを
少し恥ずかしそうに渡すからもらうソレは
今年で3つ目になる。
新任としてこの学校に来た3年前
副担任として受け持ったクラスのこの女子は
俺の何が気に入ったのか、毎年一生懸命に可愛くラッピングした
バレンタインチョコを誰よりも早く届けに来る。
「来年からは誰にも貰えない寂しいバレンタインになるな〜」
『来年も、私が作ってくるよ!』
は困った様な照れくさい様な顔を浮かべ
こちらを見上げてくる。
どきりと舞い上がりそうな想いを押し込め
精一杯の余裕のある笑顔を浮かべ
「そりゃどーも」
の頭へと手を乗せると
柔らかな髪をくしゃりと撫で
それ以上は彼女の顔を見ない様に教室へと向かう廊下を進んだ。