第8章 JOJO《岸辺露伴》
ピンポーン
杜王町で1番大きなお家のインターホンを押す
初めはインターホンを押すだけで緊張感したものだが
もう、今はそんな気持ちの欠片もない
「はい」
22年間生きてきて、1番苦手といっても過言ではない
声がインターホンから響く
『ですけれども』
すぐに扉が開き中に招き入れられる
締め切りに遅れたことも無ければ、追われたこともなく
週初めには原稿を上げてくれる露伴先生には
本当に感謝している。
しているんだけれども
「いつもの紅茶でいいかい?」そう言いながら
私の腰に手を回しリビングに案内する。
この人はいかんせんパーソナルスペースが狭く
スキンシップが多い
顔が良いのがたちが悪いところだ
『露伴先生、あの‥私原稿だけもらって帰ろうと思うのですが』
「もう少しだけ良いじゃあないか
仕事が立て込んでるのなら、夜ディナーなんてどうだろう?」
そういって、大きな手で優しくわたしの頬に触れ
甘く囁く声にNOとも言えず了承する
色っぽく微笑む先生の笑顔には
《狙い通り》と顔に書いてある様だった。
小さくため息を付き、原稿を持って会社へと戻る。
だから嫌いなのだ。
歳下の癖に変な余裕と色気を兼ね揃え
ころころころころ
手のひらで転がされている様な感覚
それが分かっていながらも、
なぜか拒むことができない自分に
『あー!イライラしちゃう!』
大股にヒールを鳴らしながら会社へと足を速めた。