第4章 皆でわちゃわちゃ彼(?)シャツ
‐赤葦side‐
やっぱり、選ばない…か。
りら、頭は悪いけど記憶力はある方なんだよね。
きっと、その服を前に着た人を分かっている。
この家から、完全に排除された、あの人だって。
あの日、りらにお酒を掛けられて、風呂に入った後に貸したものだから。
まさか、律儀に宅配便で送って返してくるとは思ってなかったんだけど。
こんな時に役に立つとは思わなかったよ。
りらの事に関しては、出来る限りノる俺が、今回に限ってスルーなんて真似は出来ない。
だからって、俺の匂いがする服を纏ったりらを見ていて平常心でいられる気もしない。
それなら、りらが確実に選ばないものを用意する。
それが、一番だと思ってわざとやった事。
着替えを終えたりらがリビングに戻ってくる。
さっきまで着ていた黒尾さんの服から、月島の服に代えて。
イラッとしてしまったけど、俺自身が選ばれないように仕組んだ事だ。
「りら、次は俺のを着るよね?」
「赤葦さんのは、無理です。」
だから、いつも通りの平等発言をする。
りらは、俺を睨んできた。
絶対に嫌だと、その瞳が語っている。
それで、いいんだよ。
じゃないと、俺の歯止めが効かなくなるから。
思惑通りにいっている事が嬉しくて、周りには気付かれないように密かに笑った。