第2章 皆でわちゃわちゃお正月(2017.正月)
リビングから続くキッチンに入って、冷蔵庫から作っていたお節料理を出す。
本当なら実家にも泊まらず、1人で過ごす予定だったから、重箱には詰めていない物だ。
「おい、タッパーのままかよ。」
「味は変わりませんよ。」
「お前な、和食専門でやってんなら、見た目も少しは気にしろ。」
保存容器のまま出したのが気に食わなかったのか、黒尾さんに突っ込まれた。
だからって、一回出した物をわざわざ引いて詰め直すのは時間も掛かるし、この家の重箱が何処にあるのか分からない。
まぁ、面倒臭いのが一番の本音なんだけど。
「まぁまぁ、りらちゃんが意外に雑なのは今に始まった事じゃねーだろ?正月なんだし、昼から飲もうぜ!」
黒尾さんを宥めるようにしながら、木兎さんが一升瓶を持ってきた。
そんなもの、家に無かった筈だから用意してくれていたんだろう。
「げ。日本酒かよ。」
「正月らしいだろ?ほら、見てみろよ!金粉入り!」
「金粉じゃなくて、金箔ですよ。コレ。」
「何が違うんだ?」
「形状、ですかね?」
話が逸れたのを良い事に、お節はそのままにして人数分のグラスを出す。
お猪口なんて気の利いたものはないから、普通のビールグラスだ。
木兎さんから、全員分のグラスに酒が注がれると、皆で軽く掲げて、年始の挨拶を口にした。
それから始まる飲み会は、いつも通りだ。
木兎さんは、食べる、飲む、喋る、全てに対して一生懸命。
黒尾さんは、その木兎さんに相槌を打ったり突っ込んだり、時にはノって話したりと忙しない。
赤葦さんも、無茶な事をする2人を止めたりしている。
本当に、普段から見ている光景。
その筈なのに、何か物足りない。
どうしてか、気付くのに時間は掛からなかった。
物足りない、んじゃなくて。
人数が足りない。
いる筈の人が、1人いない。
気付くと、その人がいない事が、淋しく思えてしまって。
皆と飲んでいる輪の中で、携帯を取り出した。