第8章 命懸けの復活
新一はこう説明した。
「使用された毒は、冷水に溶けにくい青酸カリ……。氷に穴を空け、その中心部に青酸カリを仕込み、細い氷で栓をして再び凍らせた物を蒲田さんのカップに入れたとしたら……。毒が溶け出すまでに時間がかかり、蒲田さんは中身をほとんど飲み干せるというわけですよ……」
だが目暮警部が反論する。蒲田さんが氷から溶け出した毒を飲んだとしたら、彼のカップには毒が残っているはずだと。
「蒲田さんのカップのフタ……開いてましたよね?なぜだか分かりますか?」
氷入りの飲み物を飲み終えた後、フタを開ける理由はただ1つ……。
「蒲田さんは毒を飲んだんじゃなく……食べたってことですよ……」
飲んだ後に残った氷を食べるという彼のクセを知っていれば、確実に彼を毒殺することができ、なおかつ毒はカップに残らない。
そして、そんなことができるのはただ1人──新一はそう言った。
まず、カップを手渡しただけの三谷さんと野田さんは無理。
飲み物をカップに入れて売った彩子ちゃんはその氷を入れることは可能だが、彼女はアイスコーヒーをわざとコーラに変えている。返品に来るかもしれない飲み物の中に毒なんて普通は入れない。
その上、蒲田と同じアイスコーヒーを頼んだ人間はもう1人おり、確実に彼を狙うことは不可能。50%の確率に賭けるのはあまりにも危険すぎる。
「じゃ、じゃあ……」
「ええ……蒲田さんを毒殺したのは、飲み物を買ってみなさんの席へ運んだ……鴻上舞衣さん……あなたしか考えられません!」