第8章 命懸けの復活
「蒲田さんを殺した犯人は、4人の中にいる」と平次君が公言すると、鴻上さんが真っ先に反論した。
「私は蒲田君と同じアイスコーヒーだったのよ!?私が彼の方に毒を入れたのなら、誤って自分が飲まないように直接彼に渡すわよ!」
「でも両方に入れて自分の方を飲まなければ……」
目暮警部がそう言うが、鴻上さんは自分のカップを見せて「全部飲んじゃいましたよ!」と言った。
小五郎さんが怪訝そうに「自分のはトイレで捨てちゃったんじゃないですか?」と訊くが、鴻上さんは
「私はみんなの飲み物を預けてトイレに行ったって言ってるでしょ?戻ったら劇は始まってて、その後席は立ってません!」
と反論。三谷さんも「飲み物を渡しただけだから、毒を入れる暇なんてなかった」と言い、野田さんもそれに同意した。
フタに中身が書いてあったため、開けなくても中身が分かったらしい。アイスコーヒーに至ってはガムシロとミルクが上に乗っていたそうだ。
だが──
「警部!蒲田さんのポケットから未使用のミルクとガムシロップが!」
「未使用?どういうことだね!?」
周りが驚いていると、彩子ちゃんがボソッと言った。
「中身がアイスコーヒーじゃなく……コーラだったから……」
「え?」
「そうすれば、もしかしたら私の所へ彼が取り替えに来てくれると思ったんです……。私が彼との婚約を解消した理由を訊きに来てくれるかもって……」
婚約!!? と、そこにいた全員が目を丸くした。
彩子ちゃんが卒業したら結婚する予定だったそうだが、何だか不安になり先週断りの電話を彼にしたらしい。それ以来病院に行っても会ってくれなかったから最終手段でそうしたのだと。
だがアイスコーヒーは2つ頼んでいたので、鴻上さんの分もコーラに変えたのだ。
「とにかく、4人の飲み物とガムシロップとミルクを鑑識に回せ!話はそれからだ!」
目暮警部が部下に命じる。
鴻上さんから、蒲田さんが自分の車のダッシュボードをゴソゴソとしていたなど、おかしな様子があったことが報告される。
そして平次君に推理について話しかけられたコナン君が私の方に逃げて来た。
「あら、どうしたの?」
「……あの人どうにかならないの?」
コナン君が冷めた目でそう言う。私は「無理ね」とはっきり言った。
「しょうがないでしょ?」
笑ってそう言うと、コナン君は小さくため息をついた。