第8章 命懸けの復活
「……っ、あはははは!」
私はとうとうこらえきれなくなって笑い出した。
哀ちゃんが持っていた銃の銃口からは薔薇の花が飛び出して来ていた。
「……だったらどうする?」
「はぁ?」
哀ちゃんは花を銃口から抜き、私はベレッタを懐にしまった。
「もしあの会場に、瀬里奈さん以外の仲間がいたとしたら……そして私の居所を突き止められ、博士を人質に取られたとしたら……私は今言った行動をとるわよ……」
「お、おい待てよ!じゃあ瀬里奈が黒ずくめの奴らの仲間だってのは……」
コナン君が焦ったように言った。私は笑いを引っ込めて真顔になる。
「ええそうよ、それは本当。まぁ、杯戸シティホテルの一件からだから……新入りだけどね」
「じゃあさっきのベレッタも……」
「話を戻しましょ」
私はコナンの言葉を聞かなかったふりをして、2人を交互に見た。
「まぁ、もし哀ちゃんの正体がバレたら……組織は哀ちゃんや彼女に関わった人を全員殺すでしょうね」
「おい……お前ら一体何を言いに……」
「分からない?」
私はずいっとコナン君に顔を近づけた。
「あんたに釘を刺しに来たのよ」
コナン君は意味が分からないのか、きょとんとした顔になった。哀ちゃんが説明を継ぐ。
「感情に流されて、あなたが彼女に組織のことを漏らせば……彼女は間違いなく、組織が消去する標的の1人にされるってね……」
「あの子、十中八九あんたの正体に感づいてるし」
私も口を添えた。
「そして今回ばかりは誤魔化しきれないと踏んだあなたは……薬のことや組織のことを、全て彼女に打ち明けて楽になろうとしている……」
図星だったらしいコナン君は哀ちゃんを驚いたように見つめていた。
「何驚いてるの?こんなこと、見舞いに来てあなたの顔を見れば一目瞭然よ……」
哀ちゃんの言葉に、私はくすくすと笑った。
「まぁ、哀ちゃんが気づいてるんだから、蘭ちゃんも気づいてるでしょうね。『そろそろ話してくれるかな……』なーんて思ってるかもしれないわよ」
哀ちゃんはコナン君に3本指を立ててみせた。
「あなたの選択肢は3つ……」
「3つ?」
「1つ目は、このまま彼女に何も話さず冷酷に接し続ける。2つ目は、組織に正体がバレるわけがないと高を括って彼女に真相を話す。そして3つ目は──」