第8章 命懸けの復活
そして、それから10日ほど経った頃。
コナン君の意識が回復した、と連絡が来たのだ。その報せにホッとしつつも、私はコナン君の見舞いに行こうとはしなかった。
そして、哀ちゃんからの連絡が来た。
「今日の夜ね?了解。華麗に迎えに行ってあげる」
軽口を叩いて電話を切る。
──さて、あの子はどんな反応をするのかしら。私はあるものを1つ手に取り、ニヤリと笑った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
夜。阿笠邸の前に一台の車が停まった。助手席のドアが開く。
「乗って哀ちゃん」
乗り込んで来たのは哀ちゃん。彼女がドアを閉め、シートベルトを着用したことを確認すると、私はスピードを上げて病院に向かった。
「何かオモチャでも持って来たの?」
私は哀ちゃんの方をちらりと見てそう言った。哀ちゃんもこくんと頷く。
「ええ。いっそのことやってやろうかと思って」
「私もそう思ってた所よ。気が合うのかしらね」
そう笑うと、哀ちゃんはふいっと顔を背けた。
病院にこっそり忍び込み、コナン君の病室の前で立ち止まる。そこでもう1度段取りを確認した。
「段取りは分かってるわよね?」
「ええ。先に私が入って、それからあなたよね」
「OK,分かってるならいいわ。やりましょ」
私は家から持って来た“アレ”を取り出し、ニヤリと笑った。コナンが油断している隙を突き、哀ちゃんがコナンに銃を向けた。
微かに開いているドアから、私は会話を盗み聞きする。
「悪いわね……どうやら私の中にはまだ、冷たい黒い血が流れていたみたいだわ……」
「何!?」
コナン君は本気で驚いている様子。哀ちゃんは無表情に言った。
「あら……分からないの?私の正体がバレたのよ……あなたが言う黒ずくめの組織にね……そうでしょ、瀬里奈さん?」
哀ちゃんの合図で私には姿を現した。カツ……カツ……と静かな病室に靴音が響く。
「瀬里奈……!?」
「ごめんねぇ」
ニヤリ、と不敵に笑う私に、コナン君は心底驚き、恐れているようだった。
そして、哀ちゃんとコナン君に銃を向けた。
「さぁ、シェリー……教えてあげて、この哀れな“平成のホームズ”さんに」
哀ちゃんは頷き、話し始めた。