第7章 緋色の再会──Sherry, Russian
コナン君と私で物珍しくそのポルシェを見ていると、哀ちゃんが呟いた。
「ジン……」
「え?」
コナン君と私は哀ちゃんの方を振り向いた。哀ちゃんは暗い顔で言った。
「ジンの愛車もこの車なのよ……」
「!!?」
コナン君は血相を変えて博士に4丁目の交差点まで来てもらうように頼んだ。
そして来てもらった博士からあるものを受け取る。
「何それ?」
「これか?新一に頼まれて持って来た針金のハンガーとペンチじゃよ」
「新一ってば、何に使うのよそんなもの。……ってちょっと!?」
コナン君は博士からそれらを受け取るなりすぐに車に駆け寄り、ハンガーの端をペンチで曲げた。
「え、まさかあんた……」
「昔の車はこれをこうすると……」
私が青ざめるのもいざ知らず、コナン君はハンガーの曲げた方からハンガーの引っ掛ける所まで、ガコッと音が鳴るまで窓枠に入れ込んだ。
次の瞬間、コナン君はガチャッとドアを開けた。
「ちょっ、ちょっと……一体何をする気?」
哀ちゃんがコナン君に続いて入った。
「車の中に発信器と盗聴器を仕掛けるんだよ!」
「でも新一?まだジンの車って決まったわけじゃないでしょ?」
私は車の外からコナン君を咎めた。と、哀ちゃんの表情が変わった。
「哀ちゃん?どしたの?」
「ん?どーした?」
コナン君も気づいて哀ちゃんの方を向く。哀ちゃんは恐怖に怯えた表情のまま言った。
「と、通りの向こう……」
言われてそちらを見ると──確かに黒服の男が2人、通りの向こうにいた。しかもこっちに向かっている。
コナンは急いで指紋を拭き取り、発信器と盗聴器をチューインガムに包んで車の中に設置した。
「急げ!出るぞ!」
「えっ、わっ!」
コナン君は哀ちゃんと私の手を掴み、車の外に出て後ろに隠れた。そして直後にあの黒服の男達が車に戻って来た。
彼らは車の周りの雪が荒れているのを見て不審がっていたが、大して気にも留めずに車に乗り込んでいった。
「あれね?あんたが言ってたジンとウォッカって……」
「ああ。まさかこんな所で会えるとはな……」
コナン君はニヤリと笑った。
その後、急いでビートルに乗り込み、車間を空けてジン達を追っていたが──
「やばい、バレた!!」
「えっ!?」
どうやら発信器と盗聴器がバレたらしい。私は思わず声をあげた。