第7章 緋色の再会──Sherry, Russian
ある雪の日だった──
「あっ、瀬里奈お姉さんだー!」
「あら歩美ちゃん。それに少年探偵団のみんなも。学校帰り?」
私は少年探偵団の面々と会った。
「うん。瀬里奈姉ちゃんは講義終わったの?」
コナン君に訊かれ、私は首を振った。
「うん、講義は午前中で終わり。今日はその後バイトの面接に行ってたの」
「バイト?」
コナン君が怪訝な顔をする。言ってなかったか、と内心でちろりと舌を出し、私は話した。
「そう、ポアロでバイトしようと思ってね」
「結果はどうだったんですか?」
光彦君が訊いてくる。私は満面の笑みでピースした。
「もっちろん、余裕で合格よ。面接は早く終わったんだけど、その後説明とか色々あって時間かかっちゃって……」
あはは、と笑うとみんなも笑ってくれた。
「じゃあな!」
「また明日!お姉さんもさようなら!」
「バイバーイ!瀬里奈お姉さんもバイバーイ!」
「じゃあねみんな!気をつけてねー」
私は子供たちと別れ、哀ちゃんやコナン君と一緒に歩く。ポンポンとサッカーボールを蹴りながら歩くコナン君を見て、私は軽くため息をついた。
「危ないわよ、歩きながらやってると」
「バーロ、オレは慣れてっからいいんだよ。知ってんだろ?」
「知ってるけど。もーコケても知らないからね」
「ハハ……オメーじゃあるめーし」
「なーんですってぇ!?」
ぎゃあぎゃあと騒ぐコナン君と私とは対照的に哀ちゃんの表情は暗く、ひどく落ち込んでいるような顔だった。
「……哀ちゃん?どうしたの?」
「えっ?あ、な、何でもないわ……」
哀ちゃんにそう言われ、私は、訊かれたくないことなのかもしれない、と思ってそれ以上追求することはしなかった。
だが──ある車を見て、哀ちゃんの表情は落ち込んだ顔から恐怖の顔に変わった。
「どしたの哀ちゃん?」
哀ちゃんが見ているのは道路脇に停められたポルシェ。
コナン君もそれに気づいたのか、哀ちゃんの見ているポルシェを珍しそうに見た。
「ポルシェ356A……50年前のクラシックカーだわ」
「へー……」
「持ち主は出掛けてるみたいね」
コナン君と私はひょいっと車の中を覗き込んだ。
「TVや本でしか見たことねーけど、いるんだなーこんな古い車に乗ってる奴」