第7章 緋色の再会──Sherry, Russian
黒ずくめの男達を追跡することも不可能となり、コナン君は彼らの目的地と見られる杯戸シティホテルに乗り込むことを決意した。
「新一が行くのは構わないけど、哀ちゃんを連れて行くのは反対。いくら何でも危なすぎるもの」
本当はコナン君が行くことも反対なのだが、今さら止めた所で言うことを聞くような素直な弟ではない。哀ちゃんも「そんな危ない所にわざわざ出向いてどうにか出来るとは思えない」と残る意思を表した。
「ああ、ハナからこっちもそのつもりだ……。子供の頃の顔を奴らに知られている灰原を現場に連れて行くのは危険だからな……それに瀬里奈も、もし奴らにお前のことを知られてたら危ねーしな」
哀ちゃんを連れて行かない、ということにホッとしたのも束の間、コナン君はしれっと爆弾を放った。
「まぁ、お前らは博士と車の中で待ってろよ!最悪でも例の薬ぐれーは取って来てやっからよ!」
「「例の薬?」」
私と哀ちゃんの声は見事にハモった。
おいおい、それってまさか──
「恐らくAPTX4869……オレ達の体を小さくしたあの毒薬だ……ジンが電話でピスコって奴に言ってたんだよ……『例の薬を使っても構わねぇ』ってな!」
私ははぁ、とため息をつきそうになった。
──結局、ホテルに乗り込んだのはコナン君と哀ちゃんと私の3人。
哀ちゃんは「もうコナンに人殺し呼ばわりされたくない」と無理やり付いて来た。それを見かねた私も、招待された人間のフリをして2人を追いかけたのだ。
「で?本当にここで合ってるんでしょうね?」
私はコナンをじろっと睨んだ。コナン君は珍しく私の睨みに臆しなかった。
「奴は別れの会って言ってたからな……ピスコって奴も、そいつが狙うターゲットもここに来ているはずだ……」
コナン君はシッと口の前に指を立てた。
「お喋りはここまでだ……乗り込むぜ……」
コナン君に主導権を握られているのは気に食わないが、彼の言うことを聞いていた方が楽に動けるのは明らかだ。
とりあえず、コナン君の言うことを聞いて行動しよう。
黒っぽい服装でよかった、と本気で思う。偲ぶ会だけあって、会場の中は黒服だらけだったから。おかげさまで誰も彼もが怪しく見える。