第6章 シェリー ──黒の気配
「ど、どうしよう……」
部員はみんなオロオロとする。
その中で瑠璃さんが冷静に言った。
「落ち着いてみんな。とりあえず部室行こう?」
その一声で部員は全員落ち着きを取り戻し、オレ達を連れて部室へ戻った。
「でもどうやって、あんなかさばる物を持ち去ったのかしら?」
瀬里奈はうーんと唸った。そこはオレも同意だった。
ホームズ全集などといえばかなりかさばる、盗むには最悪なものである。
「あーあ……今日はもう展示できないね、閉めてくるよ」
「ありがと華南。私ちょっと行ってくるね」
華南さんに礼を言った瀬里奈はとととっと部室を出た。それに続いてオレも部室を出る。
「なぁ瀬里奈」
「ん?……っていつの間にいるのよ。蘭ちゃんに付いてなくていいの?」
からかい口調で言われるが、オレはそれをしれっと無視した。
「あのホームズ全集って本物なのか?」
「失礼ね、本物よ。あんた瑠璃先輩疑ってるわけ?」
ジト目で睨まれる。うわー怖ぇ。ガキの頃からこいつに睨まれるのは妃弁護士に怒られるのと同じくらい苦手だった。
「てゆーかオメー何しに外出て来たんだ?」
「ん?ああ、みんなに差し入れしようかなって。人数いるからたこ焼きでもと思ってさ」
「ふーん」
瀬里奈はたこ焼きの屋台に着くと、たこ焼きを焼いている同級生に「たこ焼きたくさんちょうだい」と笑った。
「一皿に10個入ってっけどどーするよ?」
たこ焼きを焼いていた同級生(らしき人)に訊かれ、瀬里奈はうーんと考えた。
「じゃ……3つもらってこうかな」
「そんなに人数いんのかよ、お前んちサークル」
「お客さん用ですー!残念でした」
けらけらと笑いながら話す瀬里奈。
同級生も笑いながらそばにあった紙束を組み立てて箱に仕上げた。
「え、お兄さんそれどうやったの?」
「ん?ああ、この箱か?折り目に沿って組み立てるだけだよ!これならかさばらねーし、中身は後から足すんだしな」
……折り目に沿って組み立てる……中身は後から足す……?
「……そうか、そういうことだったのか!」
「え、コナン君!?ちょっと……!」
瀬里奈の止める声が聞こえたが止まる余裕はない。代わりにオレはニヤッと笑った。
「分かったんだよ、誰がどんな方法であの全集を盗んだのか!」
「えええ?」