第6章 シェリー ──黒の気配
蘭がおっちゃんに小言を言い終わった後、
「ここは僕たちが食事したり仮眠とったりする部屋だから、隣に移動しようか」
真白と呼ばれていた男性がそう言い、全員で隣の部屋に移動した。
「瀬里奈姉ちゃん、ここは何をやってるの?」
「んー?な・い・しょ♡」
瀬里奈に訊くと、彼女はそう言った。
不思議に思いながら部屋に入ると、──「おおおーっ!」部屋は名探偵一色になっていた。
「あっ、これホームズ全集の初版本じゃねーか!しかもサイン入り!」
「それは私が持ってきたのよ」
はしゃぎまくるオレに瑠璃さんがニコッと笑う。
「で、これは少年探偵団が使ってた探偵七つ道具を再現した物!で、こっちが……」
華南さんはそんなオレをスルーして他のみんなに展示品を案内する。
瀬里奈がさらりと言った。
「まだ午後の部は始まらないから、みんなでお弁当でも食べる?」
「え、でもボク達の分はないんじゃないですか?」
光彦が心配そうに言った。すると瑠璃さんがニコッと笑った。
「平気よ。一応多めに頼んであるから。何度も悪いけど、また向こうに戻ってもらえるかな」
「はーい!」
だがオレは1つ心配があった。
「でも展示室無人にしちゃっていいの?」
「あ、そっかぁ……。どうする?」
瀬里奈が部員を見回す。と、武人さんが手を挙げた。
「オレが見張りに行ってやるよ。んで、誰かが食べ終わったら交代してもらえばいいだろ?」
「でも武人先輩お腹空きませんか?」
華南さんが訊いた。武人さんは不敵に笑った。
「平気だよ。オレは高校時代空手でその名を轟かせたんだぜ?」
「でも……」
「いいんじゃない?武人先輩に任せましょ」
瀬里奈がさらりとそう言い、武人さんが見張りにつくことになった。