第5章 突然の遭遇──
私はしばらくコナン君と平次君の様子を見ていたが、2人とも完全に犯人の正体を見破ったらしく、表情がパッと変わった。
「あれじゃー、相手に感情読まれるわね……」
私は呆れつつ呟いた。
だが、いつもなら小五郎さんを眠らせて推理ショーを行うのに、今日に限ってコナン君はそれをしなかった。代わりになぜか平次君を眠らせ、妙な関西弁で推理ショーを始めた。
コナン君は犯人を戸叶さんとしてトリックを説明した。
丸一日前に殺したオーナーを車のシートに座らせ、ブレーキを踏んだ状態で固定する。半日経てば死体は死後硬直で硬くなるため、エンジンをかけてギアをドライブに入れても、ブレーキは踏まれたままだから車は止まったまま。
そして夕べの食事の前にガレージを開け、硬直が溶けてブレーキを踏んでいる足が緩み、自然に車が動き出すのをリビングで待っていれば……
「ハッハッハ、バーカめ!死後硬直はな、人間が死んでから40時間以上経たねーと溶け始めねーんだよ!」
小五郎さんが口を挟んだ。だがコナン君は──
「死体の周りの温度が35度位なら、硬直の進行と柔らかくなるスピードは上がり、24〜30時間程度で硬直は溶け始める……」
オーナーが姿を消したのは一昨日の夜10時以降。その後すぐに殺されていたとすれば車が動き出したのが約29時間後の今朝3時半頃だから、丁度いい頃合いになる。
「そして、車の中で聞こえてた風のような音はクーラーじゃない、ヒーターや!もしクーラーがかかっていたならフロントタイヤのそばから水滴が落ちるはず……この暑い時期なら1分足らずでな!そして案の定、水の落ちた跡はどこにもなかったで……」
……やるじゃない。私は薄く笑いながらそれを見ていた。
「だがそんなトリック、後で死後硬直をちゃんと調べれば簡単に……」
「だからオーナーの死体を、車ごと崖下に転落させたんや!死体を回収不能にし、死後硬直を調べられなくするためにな!」
「じゃあ車が途中でスピードを上げたのは?」
戸田さんが尋ねた。
「あれは恐らく、車が荒れ道に入ってブレーキペダルから死体の足がズレたから……」
「じゃああの毛布は、ヒーターの表示を見られないようにするためね?」
私が閃いたように言う。