第5章 突然の遭遇──
私がリビングに戻ると、蘭ちゃんと平次君の口論が勃発していた。
その様子を見ていると、平次君が『眠りの小五郎』について訊いているらしい。
コナン君はいつもどこにいるのか、ということを訊いているようだ。
「はいはい、妙な勘ぐりはそこまでね。首締まるわよ、そんな持ち方したら」
私が平次君とコナン君の間に入ると、平次君はパッとコナンを降ろした。
「もう……」
その時、フッと電気が消えた。
「雷!?」
「ち、違います!ヒューズが飛んだだけです!」
「じゃあ早くブレーカーを!」
小五郎さんが指示を飛ばす。と、藤沢さんがライターをつけた。
瞬間、嫌な視線が背筋をぞくりとさせる。
何……?今の、嫌な視線……。
そう思ったのも束の間、思考は藤沢さんの悲鳴で現実に引き戻された。
「何だどうした!?」
小五郎さんの声に被さるようにガラスの割れた音がする。
「おーい、メイドさん!!」
「早く電気を!!」
川津さんと戸叶さんが叫ぶ。パッと電気がついた時に、その場の全員が見たものは──
「ふ、藤沢さん!?」
──藤沢さんがアイスピックで刺されていた。
「とりあえず椅子に座ってください、手当てしますから!メイドさん、救急箱を!」
「は、はい!」
私はアイスピックを抜き、藤沢さんの上着を脱がせた。そこでちょうどメイドさんが救急箱を持って来てくれ、きつく包帯で傷口を巻いた。
「くそっ、なぜだ……。なぜオーナーはワシの命を……。確かに彼と口論したことは何度もあったが、それはホームズに対する互いの想いが強かったからだ!しかもワシは彼が出した本にも協力してやったというのに……」
「本?」
小五郎さんの問いに藤沢さんは片目を眇めながら答えた。
「オーナーが去年、自費出版した本だよ……。タイトルは確か、『アイリーン・アドラーの嘲笑』!このツアーの参加券をくれるというから、その本にワシも一筆書いてやったんだ……それなのに恩を仇で返しおって!!」
藤沢さんはしかめ面でそう言った。