第5章 突然の遭遇──
「犯人がどないなトリックで車のスピードを上げたかは謎やけど、電話を壊して外部から孤立させ、車を止めてオレらをここに閉じ込めたっちゅうことは……」
「犯人はまだこのふざけた殺人劇を続けるつもりってわけね?平次君」
平次君が言おうとしていたであろうことを私はさらりと取り上げた。
平次君は何か言いたげだったが、小五郎さんが参加者達に質問したことでそれは遮られた。
まずは、オーナーの挨拶の後に彼を見かけた人がいないか。だが誰もみていないという。オーナーは部屋にこもりきりで、メイドさんですら顔を見ていなかったらしい。
「くそっ、丸一日オーナーの所在が不明となると、いつ殺されたか分かりゃーしねぇな……。死体は崖の下で燃えちまったし……」
小五郎さんがうーんとうなると、川津さんが閃いたように言った。
「そ、そうだ!防犯カメラがあるじゃないですか!」
「おおそうか!あれに何か写ってるかも!」
それを聞いて、私ははて、と思った。
「でもあれ、ハリボテなんじゃないですか?確かに本物っぽかったけど」
川津さんにそう言ってみると、メイドさんが答えた。
「は、はい……その通りです。お客様がテストの不正をなさらないように、毎年このツアーの間だけ付けているハリボテで……」
平次君が自信満々で続ける。
「そやけどオーナーを車に乗せて発進させた時間なら3時半ごろやと分かっとる!!そして、その数時間前からリビングにおった……オレとあの6人には犯行は不可能ちゅうこともな!」
平次君が戸叶さんと綾子さん、メイドさん、蘭ちゃん、コナン君、私を指して言った。
「おいおい、じゃあ犯人はその時リビングにいなかった我々5人の中の誰か……」
「私を数に入れんでくださいよ……」
小五郎さんが呆れたような顔をして指摘する。そしてその様子をじっと見ている綾子さん。
彼女が平次君に「さっき探してたあれ……見つかった?」と耳打ちする。だが平次君の答えはNO。それを聞いた綾子さんは「アハハハハハハ!!!」と高笑いした。
彼女は犯人の正体もトリックも、それを裏付ける証拠も全て分かったという。
10分間猶予を与えるから、みんなの前で暴露されたくなければその前に自分で名乗り出ろ、と。
「何か知ってるのかしら……」
「あ、そういえば……」
蘭ちゃんが思い出したように言った。