第28章 緋色──Rye, Bourbon, Russian
「あのボウヤってまさか……コナン君?」
ジョディに訊かれ、赤井は左手に革手袋をつけながら話した。
「ああ……。俺の身柄を抵抗なしで確保するには……俺と繋がりが深そうなお前らのどちらかを拘束するはず……。人知れずそれを実行するには、FBIの仲間から離れる車での外出中……。俺の死に不信感を持ち始めていたジョディなら恐らくこの来葉峠に来ると的中させていたよ……」
赤井は拳銃を取り出した。
キャメルが前方を見てハッとする。
「200mのストレート!見えました!」
キャメルは赤井の言う通りに5秒間ハンドルと速度を固定した。
赤井は後ろに向かって拳銃を構える。
「無茶や!タイヤのエア漏れで車が揺れているのに、拳銃の照準を定めるなんて……」
ジョディがそう言うが、赤井は──
「規則的な振動なら……計算できる……」
そう言って、後続車の1つのタイヤに向けて発砲した。
3人の乗るベンツはギリギリの所でカーブを曲がりきり、追っ手も追いかけて来ることはなかった。
「追って来ないってことは、振り切ったようね……」
「さすが赤井さん!」
ジョディとキャメルがそう言って喜びをあらわにするが、赤井はキャメルに戻るように指示をした。
「何!?赤井が拳銃を発砲!?」
安室さんは私達に背を向けてそう叫んでいた。
「それで追跡は!?」
『先頭の車はタイヤに被弾してクラッシュ……。後続車もそれに巻き込まれて走行不能車の続出で……』
微かに聞こえる電話の向こうの声はそう言っていた。
「動ける車があるのなら奴を追え!今逃したら今度はどこに雲隠れするか……」
と、昴さんがオホンと咳払いをした。
「すみません……。少々静かにしてもらえますか?」
私は密かに昴さんグッジョブと思った。←
だって、今お父さんがマカデミー賞を受賞してスピーチをする所なのだから──
《今回、私ごときが賞を獲得できたのは、この新人脚本家のシナリオを見事に映像化された監督、スタッフ、俳優の方々のお陰だと思っております……。そして、忘れてはならないのがこの『緋色の捜査官』のモデルとなった彼……。
イケメンで礼儀正しく、クールでダンディで……もォFBIに置いとくにはもったいないくらーい♡──っと妻は申しておりました……》
私はそんな父に画面越しに苦笑いをこぼした。