第28章 緋色──Rye, Bourbon, Russian
昴さんが少しだけ眉を吊り上げた。
そんな彼に安室さんはフッと笑い、目を閉じる。
「だが、それもフェイク……。撃たれた男はいつも黒いニット帽を被っていましたから……」
そして安室さんは目を開け、隣の阿笠博士宅を見上げた。
「この近所にはMI6も顔負けの発明品を作っている博士がいるそうじゃないですか……。彼に頼めば、空砲に合わせてニット帽から血糊が噴き出す仕掛けぐらい簡単に作れそうだ……」
昴さんはいつの間にか足組みを解いており、安室さんは左手をポケットに突っ込んでいた。
「じゃあそのグルの女に頭に向けて空砲を撃ってくれと頼んでいたんですね?」
「いや……頭を撃てと命じたのは監視役の男……」
監視役の男──ジンが拳銃でとどめを刺す際に必ずそうすると予想していたのだろう。
昴さんが撃たれた男のことを褒め称えた。
「なかなかやるじゃないですかその男……。まるでスパイ小説の主人公のようだ……」
安室さんは「だが……」と話を翻した。
「この計画を企てたのは別の人物……。その証拠にその男は撃たれた刹那にこう呟いている……。『まさかここまでとはな……』ってね……」
「し、しかし……とても信じられないですよ……」
来葉峠を走るベンツ。
キャメルとジョディが話している。
「だって赤井さんがその携帯に触ったのって……水無怜奈を奴らに奪還させる前ですよね?その時点でもう赤井さんは自分を殺せと彼女が命じられることを想定してたんですか!?」
「ええ……。シュウなら多分……」
そこでジョディはハッと気づいた。
『じゃあボクの携帯しばらく貸してあげるよ!』
『さっきコナン君から借りて、今私持っていて……』
シュウじゃない……。
『ジョディ先生……頑張ってね!』
これって……まさか……。
ジョディが1つの可能性に辿り着いた時、キャメルが「少々飛ばしますよ……」と囁いた。
「後ろから妙な車が数台……尾けて来ているんでね……」