第27章 ギスギスしたお茶会
「そりゃ怒るわよ!伶菜に勧められて買った株が暴落して……こっちは大損したっていうのに……。伶菜はちゃっかり下がる前に売り抜いて大儲けしたんだから!」
3人目、別府華月さん。
別府さんは須東さんが死んで金が入るなら彼女を殺したかもしれない、と言った。
「別に亡くなった人を悪く言いたくはないけど……樹理だって相当腹に据えかねてると思うわよ?伶菜のせいで樹理の息子さんのお受験、失敗したようなもんだから……」
高坂さんと須東さんの息子さんは同級生で、一緒の中学を目指していたそうだ。だが受験の前日に勉強しに来た須東さんの息子さんがインフルエンザにかかっていて、それが高坂さんの息子さんにうつってお受験どころじゃなくなったのだという。
「お受験の前は『いい報告できそう』って樹理、ニッコニコだったのに……」
ちなみに、別府さんと八方さんが入れ違いで一度ずつお茶を飲み始めてから部屋を出たそう。
別府さんはトイレに、八方さんはお茶請けのお菓子を買いに行き、高坂さんと須東さんはずっと部屋にいたらしい。
須東さんがポットにお湯をもらいに行っていたらしいが、それは別府さん達2人がここに来る前。
4人が使っていたティーカップは高坂さんの持ち物で、重曹を使ってピカピカに磨いているとか。
(ふぅーん……。重曹、か)
私はふと気づいて、別府さんに尋ねた。
「あの……テーブルにあったレモンって、須東さんが持って来たんですか?」
「え?ええ……。伶菜はレモン好きだったから……」
……なるほど。
「でもそれがどうかしたの?」
「いえ、何でも……。ありがとうございます」
私はニコリと笑って廊下に出る。
ふぅ、と息をつくと安室さんが隣に来た。
「……何ですか?」
「事件の真相……分かりましたか?」
「え?まぁ……。何となく、ですけど……」
と、安室さんの視線がある一点に釘付けになった。
「……?」
彼の視線の先には、「ダメだって言ったでしょ?うろちょろしちゃ……」とコナン君を叱っている蘭ちゃんと、「だってー……」と眉を八の字にしてそう言うコナン君がいた。
2人を見ているようで、彼の思いはどこか遠くへ行っているようだった。