第26章 ジョディの追憶とお花見の罠
「……し、死ぬかと思った……」
帰りの車中。
無事に仕事を終え、私はあくびを噛み殺した。
あの後、無事に車に乗れたはいいものの、『瀬里奈が神社に出没』『瀬里奈の名推理』などとネット上に上がり、仕事場にマスコミが駆けつけて来たのだ。
「もう……。いくら工藤優作の娘だからって、あっちこっちでそんなことされたら困るわよ」
「いつもはしてないもん。今日は小さな探偵君に頼まれたからやっただけだし……」
私はぷぅっと頰を膨らませた。そんな私の様子に珠希さんは苦笑いだ。
「おかげで工藤優作と藤峰有希子の娘ってバレたわね?」
「……隠し通しておきたかったのになぁ」
そう。なぜかマスコミに『瀬里奈は工藤優作と藤峰有希子の娘』という情報が流れていたのだ。マスコミの情報収集恐るべしである。
おかげで血筋がバレてしまい、私は今かなり不機嫌だ。
「推理力は父親譲り、演技力は母親譲りってね……。仕事のバリエーション増えるわね」
「やだ。これ以上増えたらバイトも学校もままならないじゃん」
元々ポアロのバイトと大学と両立してやる、という約束だったはず。それでもキツキツで、仕方なしにポアロのシフトを少しだけ融通してもらっているというのに、これ以上増えたら……。
「……バイトは辞める気ないし、学校も辞めない。ただ、これ以上仕事が増えるようなら、芸能界を辞める」
「思い切ったこと言うわね……。まぁ、あんたはウチの稼ぎ頭だから。今の所は頑張ってもらわないと、ね」
「……分かってるよ」
私の機嫌が良くなることはなく、家に帰っても膨れっ面のままだった。