第26章 ジョディの追憶とお花見の罠
「それで?どうなの博士……。あの4人の中にあなたが見た犯人はいる?」
ジョディが博士にそっと声をかけた。博士は「ウーム……」と唸る。
「あの杖をついた老人が怪しいが……犯人が持っていたのは30㎝くらいの細い棒で杖じゃなかったし……。瀬里奈君の帽子が犯人の被ってた帽子と似ているが……犯人の帽子はそんなにツバが広くなかったしのォ……」
瀬里奈の被っている帽子は女優帽。博士の見た犯人の帽子は登山帽に近い。
女性の被っているニット帽や老人のハンチング帽でもない。
中年の男のような咳もしていなかったらしい。
「じゃあ歩き方はどうなの?」
「ウーム……。……。あの老人は足を引きずるというか……杖がないと本当に立っておられんようじゃし……。若い女性も中年の男も……足を引きずっている様子はないのォ……」
──瀬里奈side
「何!?凶器が見つからんだと!?」
目暮警部が声を上げた。手水舎の排水口、賽銭箱の中も調べたのだがどこにも見当たらないのだ。
「あの4人は持ってなかったんですよね?」
「ちょっ!私を犯人扱いしないでくださいよ!」
私は慌ててそう言った。だってただ単にあのおばさんの死体を見つけただけなんだから。
坂巻さんの杖も凶器に使われた痕跡はなかったし、4人の携帯に発信器を追跡するアプリは入っていなかった。
私は1人でこの神社をぶらぶらしていただけだし、坂巻さんは「いいクジを引いたら持って帰ったほうがいい」と子供達に教えていたらしい。
また、段野さんは賽銭箱の前で、「鈴を鳴らすなら神様に聞こえるように大きな音で鳴らせ」と言ったとか。
弁崎さんは手水舎で「もう手は清めた」と言っていたので、子供達と会う前から神社にはいたようだ。
「目暮警部!犯人のものと思われる帽子とコートを見つけました!」
千葉刑事が駆けて来る。
散った桜の花びらで覆うように隠してあったらしく、花びらまみれだった。
「じゃあ凶器も同じように隠しているかもしれん!花びらを蹴散らしてでも探し出せ!」
「はい!」
目暮警部に言われ、高木刑事や千葉刑事達が何人かが走って行く。それを聞いた歩美ちゃんが「えー!」と残念そうに言った。
「せっかく綺麗な桃色の絨毯なのに〜!」
「そうね……。1枚1枚は花びらなのに、たくさん散りばめればまるでピンクのカーペット……」