第26章 ジョディの追憶とお花見の罠
「他に犯人の特徴とかは……?」高木刑事に訊かれ、博士は「そうじゃのォ……」と考え込んだ。
「そーいえば立ち去る時に少々足を引きずっておったわい!大丈夫ですかと声をかけたぐらいじゃから……」
「それで犯人は?」
「ワシを無視して行ってしまい……その人が打ち付けていたのがあの女性だと分かった時にはもう人混みの中に……」
一刻も早く立ち去りたい状況で足を引きずっていたのなら、容疑者から外れるための演技ではなさそうだけど……それだけで神社にいる大勢の花見客の中から殺人犯を割り出すのは骨。でも──
「もっと絞り込めると思うよ!そのおばさんの札入れに変な物が入ってたし……」
「変な物?」
目暮警部が怪訝な顔をした。私が答える。
「お札にくるまれたGPS発信器ですよ……」
「な、何でそんな物が……」
目暮警部が驚いたような顔をし、私の方を見た。
「そのスリの黒兵衛が一度も高まっていないのなら、スられて黒い五円玉を懐に入れられるまで黒兵衛を特定できないからです。そうやって発信器入りの財布をわざとスらせて、携帯電話で位置を把握し、黒兵衛が人気のない場所に行くのを待って撲殺したんです!まぁ、スリは複数犯も多いから仲間割れの線も捨てきれないですけどね……」
最後にそう付け加え、私は苦笑いを零した。
コナン君が私にハッキリ言う。
「黒兵衛は単独犯だと思うよ!自分で『スリがいるわよー』って騒いでたし……」
「そうなの?」
私はその話を知らなかったため、きょとんとした。
それなら単独犯だろう、と1人で納得している私にジョディさんが腑に落ちないと言わんばかりに私に尋ねた。
「瀬里奈さん……どういうこと?」
「スリがよく使う手ですよ!スリがいるって聞くと、思わず自分の財布を確認しちゃうでしょ?スリはそれでスる相手の財布の場所を知るんですけど……相棒がいるなら、その騒ぐ役を相棒にやらせるはずなので……。ん?てことは……」
私は慌ててカバンを探った。「……あ」
「どしたの瀬里奈姉ちゃん?」
「私もこの人に財布盗られてる……」
ぶつかったあの時か。
私は小さく舌打ちをした。
「さっきこの神社に来た時、この人とぶつかったんですよ……。多分、その時にスられたんだわ……」