第5章 突然の遭遇──
そうメールを返すと、今度は電話がかかってきた。液晶に表示されている名前は見るまでもない。
「はいもしもし?」
『“色々あって〜”のその“色々”を教えろと言っているんだ!』
相手はやはり安室さんだった。
開口一番の怒声に私は鼓膜が破れるかと思った。キーンと耳が鳴るのを堪えて話を続ける。
「だってまだそれを話せる程信用してないもん」
『君は今どこにいるんだ?』
「いつもの敬語が外れてますね安室さん。てゆーかここは盗聴器ないんで本名で呼んでいいですか?」
『話をそらすな!……盗聴器がないのなら本名でいい』
安室さん──もとい降谷さんはため息をついてそう言った。
なぜか降谷さんは私に甘い。盗聴器のことだって、降谷さんが確認したわけではないのに『本名で呼んでもいい』などと言うなんて、普通なら有り得ない。
「ここはマイクロフトっていうペンションですよ。ホームズファンが集まるツアーに来てるんです」
『なんで君がそんな所に?』
「知り合いに誘ってもらったんです。意外と楽しいですよ、ここ」
おどけてそう言うと、降谷さんは呆れたようにため息をついた。
『そういう話じゃない。……少し、聞いてもいいか』
「?はい」
声音が真剣なものになった降谷さんに、私はきょとんとしながら言った。
『スコッチが死んだ時……赤井は本当にあいつを手にかけたのか?』
降谷さんの質問に私はどう答えたものか、と悩んだが、赤井さんのあの嘘には意味があると信じ、彼の嘘を突き通した。
「……ええ。彼が殺したも同然ですよ」
そう言うと、降谷さんは『そうか……』とだけ呟き、
『夜分遅くにすまなかった。ゆっくりお休み』
「いえ、こちらこそ夜遅くにメールしちゃってすみません。じゃあおやすみなさい、降谷さん」
『ああ、おやすみ瀬里奈』
最後に挨拶を交わして電話を切る。
私はばふっとベッドに横になり、先ほどもらったテストを眺めた。
「ホームズカルトテスト1000問ねぇ……」
新一ならすぐに解いてそうよね。私はそう思い、やってみるかと思ったが、やる気が起きずにそのまま眠ってしまった。