第25章 果実が詰まった宝石箱
部屋に入ると、箱の裏に隠れていたコナン君が前に立っていた。
「っていうか、世良さんは!?」
園子ちゃんがきょろきょろと辺りを見回す。コナン君が「どこだと思う?」ニヤニヤと笑った。
「まさか……箱の中に!?」
小五郎さんが慌てて南京錠を確かめる。鍵は確かにきちんと閉まっている。
鍵を開けてみると──
「ジャーン♪」
世良さんが中から出て来た。
このマジックのタネは南京錠と同じ金色で塗られているゴム製のチューブ。
南京錠をかける時にバーの先にチューブをはめ、南京錠の穴に無理やりねじ込んだのだ。
そうすれば鍵がかかっているように見える上、錠前をひねるだけで簡単に南京錠が外せるし、チューブを付けた境目が南京錠のバーを通す箱の合わせ目のパーツに隠れて見えない。
「つまり、そのチューブで鍵をかけたフリをしたボクが南京錠を外して箱の中に入り……箱の裏に隠れていたコナン君がチューブを抜いて、今度は本当に南京錠をかけたってわけさ!」
このトリックのポイントは南京錠。鍵がなくてもロックが出来るという点。
最初から箱の中身を知っている春日さんはこんな細工をして箱の蓋を開ける必要はないし、南京錠をかけろと指示をした樽岡プロデューサーもこのトリックを使う機会がない。
となると、残るは樽岡プロデューサーに鍵をかけて送り返せと指示されたADの降谷さんただ1人。
「どーせチャンピオンに箱の中のお題の果実を教えて報酬を得るために、毎回倉庫で箱を開けてたんだろーけど……昨夜は武木さんが潜んでいて……それを見咎められて揉み合いになり……はずみで殺しちゃって慌てて箱の中に隠したって所かな?」
証拠は降谷さんの胃の中。
武木さんを箱に入れた時、入りきらなかったリンゴをミキサーにかけて10個くらい飲んでしまったのだろう。
そして、リンゴの種にはアミグダリンという成分が含まれており、食べ過ぎると青酸中毒になるのだ。
「まぁ大丈夫ですよ……。リンゴ10個くらいなら青酸中毒にはならないはずだし」
私は口を押さえている降谷さんにそう言う。
「でも朝から何も食べてないなら大の方はまだのはず……。その内出て来るんじゃないか?ミキサーで砕かれ損ねた珍しいリンゴの種が……」
世良さんがニヤッと笑いながらそう言った。
「そいつが出てくればケースクローズド……。まさにウンの尽きってわけさ!」