第25章 果実が詰まった宝石箱
次の日。私はバイト休憩中にネットニュースを見た。
「おーおー、派手に出てる……」
ADの降谷さんから種が出て、お題のリンゴと一致したそうだ。チャンピオンの栗村さんも「お題のフルーツを事前に聞いていた」と自供したみたい。
「そんなズルして勝って嬉しいのかしら……」
私はポツリと呟いた。
時計を見ると、休憩時間がちょうど終わる。私はエプロンを着けて店に出た。
箒とちりとりを持って外に出ると、兄妹らしき2人組がいた。
「お兄ちゃん、わたしアイス食べたーい!」
「さっきジュース飲んだだろ?お腹壊すぞ?」
「平気だもんー!」
そんな子供達の声を遠くに聞きながら、私は少しだけ羨ましく思った。
「……いいなあ」
「何がです?」
いきなり後ろから声をかけられ、わたしは声を上げそうになった。
「ぅわ!……安室さんか」
私は大きくため息をついた。
「何か悩み事ですか?」
「あ、いえ……。何かいいなーと思って……」
私が先ほどの子供達を見ながらそう言うと、安室さんがポンポン、と頭を撫でてきた。
「……?」
「辛い時は泣いていいと思いますよ。我慢すると疲れるでしょうから……」
彼のその言葉に、私はくすっと笑った。
「我慢はしてないけど……。うん、辛い……かな……」
私は唇を噛み締めた。
あんなことさえなければ、今頃、みんなで幸せに暮らせてたのかもしれない。
「ごめんなさい……。ゴミ袋取ってきますね……」
私はタッと裏に駆け込んだ。
扉を閉め、その脇にしゃがみ込む。
「ッ……ひっ……く」
声を押し殺して泣く。涙が堪えきれなかった。
いつの間にかドアが開いている。頭を撫でられ、顔を上げようとしたらそれを拒否するかのように押し戻された。
「……大嫌い」
「大嫌いで結構ですよ……」
安室さんの声がボロボロの心と体に染みる。
私は声を押し殺して、静かに泣いた。
「……1人で泣かないでください」
安室さんがそう呟いた気がしたけど、私にはよく分からなかった。