第25章 果実が詰まった宝石箱
「あー!君達も今、ボクと同じこと思いついただろ?ん?ん?」
そして世良さんは手を離し、「でも問題は証拠なんだよなー……」と考え込み始めた。
この子のこの笑い方……どこかで見たことがあるような……?
笑うと出るあの八重歯といい……どこかで会ったことがある気がする……。
2人で世良さんをじっと見ていたため、彼女は少し不思議そうな顔をした。
「ん?何だ何だ?ボクの顔に何か付いてるのか?」
「あ、ううん……。何でもないよ……」
と、鑑識さんが箱の写真を撮り終わった。
リンゴはピッタリ箱に収まるくらいの量しかなかった。
「おかしいな……」
「え?何でですか?」
蘭ちゃんに訊かれ、私は答えた。
「だって、いつもなら2、3個溢れるくらい入ってるのに……。妙に少ないから……」
剣崎さんの決め台詞が「ご覧ください、この溢れんばかりのフルーツを!」だし。
ん?待てよ……。だとしたら……。
私は世良さんとコナン君と一緒にダッと走り出した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「何で入れてくれないんだよ!?いいだろ?ちょっとくらい!」
事件のあった倉庫の前。世良さんは高木刑事にそう文句を垂れていた。
「じゃあ倉庫の中で何か見つけなかった?」
高木刑事はコナン君に訊かれたが、今の所事件に関係する物は何もなかったという。
「じゃあ、中で変わったこととかはありましたか?」
私が訊くと、高木刑事は思い出すように言う。
「そーいえば、倉庫に調べに入った時、若いADが怒られてたよ……。ドラマのキッチンのセットで使う小道具がちゃんと洗ってなかったって……」
「……それってミキサーですか?」
「ああ、そうみたいだけど……」
ちなみに別室で待機している容疑者3人は「早く解放してくれ」と訴えているらしい。
樽岡プロデューサーは事件の記者会見があるから。
ADの降谷さんは朝から何も食べていないから食べに行かせてくれ。
フードコーディネーターの春日さんはペットの犬の餌をやりに行きたい。
「じゃあ早く始めた方がいいよ……」
「え?何を?」
世良さんの言葉に、高木刑事は怪訝な顔をした。世良さんはニヤリ、と笑った。
「なーに、ちょっとした……マジックショーさ……」