第25章 果実が詰まった宝石箱
──瀬里奈side
「お姉さん!」
「蘭ちゃん!みんなも!来てくれてありがとね」
私は着替えを終え、出番まで控室にいることにした。
と、ドアがノックされ、蘭ちゃん達が顔を出してきた。そして言ったのが先ほどのセリフだ。
「わぁ、お姉さん綺麗!」
「ありがと……」
今日の衣装は黒基調のドレスで、かなり落ち着いたデザインだ。
「瀬里奈?そろそろスタジオ入りするわよ!」
マネージャーの珠希さんに言われ、私は軽く身だしなみを整えて楽屋を出た。
「あ、じゃあ私達も行きますね!」
「うん、またスタジオでね……」
私は5人に手を振って別れた。
スタジオに入るや否や剣崎さんに呼ばれ、私は彼の元に駆け寄った。
「何ですか?」
「実は武木さんが連絡取れなくて……スタジオ入りもしてないんだ……」
「えっ!?じゃあ代理の審査員は……」
「そこは抜かりないよ……」
「え?」
私は軽い打ち合わせを済ませ、本番の位置についた。
《本番5秒前……4……3……2……1……》
パッと私と剣崎さんにスポットライトが当たる。
「ようこそ我がクッキングアリーナへ!今宵も甘〜い一夜をご堪能ください!」
剣崎さんがそう言い、私はモニターに目を向けた。
「本日のフルーツを発表する前に、我々のアリーナに招待した2人の客人を紹介しましょう!今回2度目の来場となる沖野ヨーコさんと……泣く子も黙る名探偵……毛利小五郎大先生です!」
オオオオオ、とギャラリーが沸く。
武木さんの代役だというのに、小五郎さんは全く緊張していない。
「毛利探偵はスイーツとかよく召し上がられるんですか?」
剣崎さんが訊いた。小五郎さんは表情筋を緩めたまま言う。
《ええ!甘い物には目がなくて……》
《じゃあ奥様がよく作ってくださるとか?》
《ウチの女房?ダメダメ!あんなの食えた物じゃないっスよ!》
それでドッとギャラリーが沸く。
「では……。チャレンジャー榎戸呉亜パティシエールと……チャンピオン栗村習平パティシエが……今宵、丸裸にする果実の発表です……」
「いつものようにプロデューサー樽岡氏が……東都銀行の貸金庫に封印していた鍵を授かり……この禁断の果実の箱を……開けましょう!」
私は箱の後ろに回り、剣崎さんが鍵を開けてから箱を開けた。
そこでフルーツを紹介するはずだったのに──